artscapeレビュー
サーペンタイン・パヴィリオン2017
2017年10月01日号
会期:2017/06/23~2017/11/19
サーペンタイン・ギャラリー[イギリス]
ロンドンの夏の風物詩、今年のサーペンタイン・パヴィリオンを手がけたのは、アフリカ出身でベルリンを拠点に活躍する建築家、フランシス・ケレ。筆者は2012年、ヘルツォーク&ド・ムーロンのパヴィリオンを見て以来、訪れるのは2回目。その限られた経験でいうと、最初はとてもコンパクトでシンプルな構造の建築に見えた。アフリカの布の幾何学的パターンを思わせるようなデザインで木造ブロックを組んだ外壁の色は、インディゴ・ブルー。ハイドパークという緑の木々に囲まれた立地では、非常に鮮やかな色彩だ。上に向かって張り出す木の天蓋は、雨や暑さをしのぐ働きをするのみならず、その機能は建物全体へと拡張している。出入口は多く(4つ)、オープン・エアで、漏斗状の屋根の中央では雨を集めて床に逃がしたうえに、公園敷地の注水に資する仕組み。シンプルな構造に見えながら、変化しやすいロンドンの天候に合わせた合理的な建築だ。建築家は、故郷の自然の「木」をインスピレーションにしたという。アフリカでは、大きな木の下で人々は語り合う。それはいわば日常生活に根差した必須の「場」である。その企図を知ってか知らずか、夏のロンドンの日差しのもと、人々は屋内のカフェでお茶を飲みながら語らい、屋外の芝生では子供たちが楽しそうに遊びまわっていた。[竹内有子]
2017/09/04(月)(SYNK)