artscapeレビュー
グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史
2018年03月01日号
会期:2018/01/23~2018/02/22
クリエイションギャラリーG8[東京都]
あなたが20世紀を振り返るとしたら? この問いをグラフィックデザイナーに投げかけたら、どんな答えが返ってくるだろう。それを試みたのが本展だ。本展は、1953年の創刊から半世紀以上にわたり、国内外のグラフィックデザインを取り上げてきた雑誌『アイデア』を手がかりとしながら、日本の20世紀グラフィックデザイン史の再解釈と再構築を試みる内容である。まず入口側のRoom Cの壁面に目が吸い寄せられる。それ自体がタイポグラフィ作品のように壁面に文字が埋め尽くされていたのだが、足を止めてじっくりと見入ってしまったのは、1850年代から2010年代までのデザイン年表だ。なぜ始まりが20世紀よりもさかのぼる1850年代なのかという謎は、頭の項目を見て納得がいく。1851年に「世界初の国際博覧会、ロンドン万国博覧会を水晶宮で開催」とあったからだ。そう、世界における近代デザインの歴史はおそらくここから始まった。
この俯瞰的なデザイン年表を踏まえながら、隣のRoom Aに進むと、今度はよりテーマ性を持ったグラフィックデザイン史へと踏み込んでいく。ここでは新進気鋭の30〜40代のグラフィックデザイナー13人によるプレゼンテーションが展開されていた。各々があるひとつのテーマを掲げ、それに沿ったグラフィックデザイン史を論文に述べ、併せて参照となるグラフィックデザインを展示していた。例えば「土着性と根源的グラフィック」「ブックデザイン 作法と模倣」「純粋限界グラフィック」「善と悪のデザイン」など、興味深い視点が多い。年齢的に彼らがデザインを学び、デザイナーとしての活動を始めたのは1990年代以降となるが、しかし彼らの多くが1950年代あたりのグラフィックデザインから現在までを検証していた点に勉強熱心さがうかがえた。各々が掲げたテーマは、いわば個人の歴史観でもある。まるでその人の本棚を覗くような楽しさがあった。しかし一つひとつの論文が、本や雑誌で読むのにはちょうど良い長さかもしれないが、展示で観るにはやや長すぎると感じ、また参照のグラフィックデザインがほとんどコラージュ形式で展示されていたため、どれが何なのかわかりづらいものが多かった。もう少し上手く編集されていれば、もっと多くの人々に伝わっただろう。
公式ページ:http://rcc.recruit.co.jp/g8/exhibition/g8exh_201801/g8exh_201801.html
2018/01/31(杉江あこ)