artscapeレビュー

村上華子展 ANTICAMERA(OF THE EYE)

2018年03月01日号

会期:2017/12/11~2018/1/19

第一生命ギャラリー[東京都]

重厚な第一生命日比谷本店のビルを入ってギャラリーに向かうと、入口から金の額縁が目に飛び込んでくる。このギャラリーには似つかわしくない作品だなと思いつつ入室してみると、額縁ではなく、縁が黄金色をした大きなプリントであることがわかる。いやそれは最初からわかっていたんだけど、いちおう書き出しとして知らんぷりして書いてみました。第一生命がスポンサーを務める「VOCA展」で昨年、佳作賞を受賞した村上華子の個展。「ANTICAMERA(OF THE EYE)」と題するシリーズは、100年ほど前に生産されたものの、未使用のまま残されていた最初期のカラー写真「オートクローム」の乾板を現像したプリント作品。だからなにかが写っているわけではなく、100年のあいだにわずかながら光学的・化学的変化を起こしてシミのような偶然の模様が成長したのだ。額縁のように見えたのも、乾板の周囲にたまたま瑪瑙のような美しいパターンが現出したもの。作者もこれを見て「お、これは絵画だ!」と思ったのではないか。

2018/01/16(村田真)

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