artscapeレビュー

桑久保徹展「A Calendar for Painters Without Time Sense 1.3.4.5.7.8」

2018年03月01日号

会期:2018/1/20~2018/2/17

小山登美夫ギャラリー[東京都]

最初に出くわすのは、数十本のイーゼルに掛けられたキャンバス画のある海辺の風景画。画中のキャンバスに描かれているのは《グランド・ジャッド島の日曜日の午後》や《アニエールの水浴》など、スーラの絵だとわかる。画面全体も点描で表わされている。タイトルは《ジョルジュ・スーラのスタジオ》。これを含めて、150号ほどの大作ペインティング6点の展示。いずれも海辺を背景にした巨匠たちのスタジオという設定だ。鮮やかな紺色の空の下、《タンギー爺さん》や《星月夜》が並ぶのはもちろん《フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ》。セザンヌのスタジオの背景にはサント・ヴィクトワール山がそびえ、ピカソのスタジオは《ゲルニカ》に合わせて白黒だ。うれしいことにフェルメールのスタジオもあって、フェルメール作とされる37点すべてを描き込んでいる。意外なのは《キリストのブリュッセル入城》をメインとしたアンソールのスタジオ。6点の中にアンソールを入れるというのはかなりの冒険だ。

さてこのシリーズ、方法は異なるけれど末永史尚の「サーチリザルト」と同じく、かつてコレクターがカタログ代わりに自分のコレクションを画家に描かせた「ギャラリー画」の現代版といってもいいものだ。それだけではない。この6点に対応して鉛筆のドローイングもあり、なぜかカレンダーがついている。ピカソは巨匠中の巨匠ということで1月、フェルメールは描き始めた時期に合わせて3月、アンソールはピンク色の印象が強いので桜の季節の4月、というふうに決められている。もうひとつおまけに、ドローイングの上に1枚ずつレコードがついていて、各画家にインスピレーションを得た日高理樹の曲が録音されているという。ほしくなってまうやろ!

2018/02/14(村田真)

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