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BankARTスクール2018 2月-3月期 横浜建築家列伝vol.4 五十嵐太郎+磯達雄

2018年03月01日号

会期:2018/02/12、02/26

BankART Studio NYK[神奈川県]

筆者が建築ジャーナリストの磯達雄と担当するBankARTスクールの横浜建築家列伝のシリーズ、第4弾が行なわれた。2月12日は坂倉建築研究所の萬代恭博を招き、お話しいただく。1960年代に建設された神奈川県庁の新庁舎の免震による増改築プロジェクト(場所を移転し、高層ビルを新しく建てる横浜市庁舎とは対照的)、シルクセンター、ポストモダンの時代を反映し、装飾的な記号を導入した人形の家や山下公園再整備など、横浜の作品をひもときながら、同時代の渋谷や新宿のプロジェクトが紹介された。改めて坂倉準三は、日本では珍しく単体としての建築を終わらせず、都市デザインを展開しようと考えていた建築家だということがよくわかる。また興味深いのは、かといって丹下健三とは違い、家具レベルのヒューマン・スケールも同時に設計したり、鉄道会社や百貨店など、民間の事業に取り組んでいたことだ。

2月26日は、tomato architecture(冨永美保+伊藤孝仁)をゲストに迎えた。富永はまだ20代だから、シリーズでは最年少だろう。《CASACO》ほか、東ヶ丘のまちにおける一連の仕事や真鶴の改修など、せざるをえないリノベーションの世代である。《CASACO》は筆者が企画した「3.11以後の建築」展の「住まいをひらく」のセクションに入るようなプロジェクトであり、この展示を契機に着想した「リレーショナル・アーキテクチャー」の概念にどんぴしゃの活動を行なう。実際、彼女が東京藝術大学の助手を務めたときの被災地の雄勝町でのヒアリングが影響したらしい。冨永が学部3年次に企画した建築女子展で初めて知り、その後、2011年にせんだいデザインリーグで審査を担当したときに日本一に選ばれたが、味のあるドローイングは変わらない。伊藤孝仁は筆者がお題を決めたTEPCOインターカレッジデザイン選手権のコンペで2度優秀賞を獲得していた。学生のときから間近で目撃した建築家である。

2018/02/26(月)(五十嵐太郎)

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