artscapeレビュー
未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展
2019年02月01日号
会期:2019/01/23~2019/03/03
国立新美術館[東京都]
文化庁新進芸術家海外研修制度の成果を発表する展覧会。今回はここ3、4年内に派遣されたアーティストを中心に、計10人の作品を展示。成果発表といっても、派遣先でつくった作品だけを見せるわけではなく、また「派遣前」「派遣後」に分けて「こんなに効果が表れました」みたいなあからさまな展示でもなく、近作・新作を個展形式で自由に見せている。作家にとっては国費を使ったことに対する務めであり、また、国立美術館で作品を見せられる特権でもあるだろう。逆に鑑賞者にとっては、こういう奴らに税金が使われたのかと確認する場でなければならない。派遣作家を選ぶほうも大変だ。
展示で目を引いたのは蓮沼昌宏。展示室に長大なテーブルを置き、14台のキノーラと呼ばれる簡易式ぺらぺらアニメを並べた。当日は中学生が団体で訪れていたので、テーブルは満席。みんな席を移動しつつ作品に見入る様子は理科の実験室のようで、現代美術展では見慣れない風景だった。村山悟郎の絵画と呼ぶにはあまりに逸脱した「織物絵画」も目を引いた。麻紐を放射状または鳥の羽根のように織った上に絵具を施した作品は、本人によれば、雪の結晶やアリの巣などに見られる自己組織的なプロセスやパターンを絵画で表現したものだそうだが、ぼくから見ると、未開民族の呪術的装飾を思わせると同時に、はるか絵画の原点に思いを馳せさせもする。
展示の後半は映像系の作品が多くてスルーしたが(^^;)、最後の三瀬夏之介の部屋で立ち止まってしまった。いや、立ち止まらざるをえないでしょ、展示室いっぱいに《日本の絵》と題された超大作が立ちはだかっていたんだから。もちろんデカすぎて通れないという意味ではない。具象・抽象を問わず多彩なイメージを織り込んだ紙を切り貼りし、支持体に貼らずに上から吊るし、どこからどこまでがひとつの作品かわからないようなインスタレーション形式で見せるなど、日本画の範疇を超えたより大きな「日本の絵」を目指していたからだ。これまでの9人の作品が吹っ飛ぶほどのインパクト。よく見ると、三瀬は文化庁の海外研修制度の恩恵は受けておらず(五島記念文化財団の助成を受けたことはある)、今回はゲスト作家という扱い。文化庁の研修制度が色あせて見えないか心配だ。
2019/01/24(木)(村田真)