artscapeレビュー

改組 新 第6回 日展

2019年12月01日号

会期:2019/11/01~2019/11/24

国立新美術館[東京都]

もう20年ほど日展を見続けているけど、さすがに6年前の不正審査発覚で少し空気が変わったとはいえ、相変わらずコンテンポラリーにはほど遠いアナクロ作品が並んでいる。意外なのは、前にも述べたが、洋画より日本画のほうに新しい芽生えみたいなものが感じられることだ。例えば川嶋渉の《凍》は、洋画には見られない完全抽象だし(といっても銀箔を使ってこのタイトルだからね)、寺島節朗の《想》は写真をベースに着彩した京都ガイドみたいな宣伝画だし、近松妙子や佐古奈津実や奥村絵美はポップでマンガチックな日本画を出している(3人とも女性なのは偶然ではないだろう)。

そのほかの大半は旧態依然とした日本画部門だから、彼ら彼女らの新しさが目立つのかもしれないが、それにしても洋画の百年一日のごとき陳腐さは、もはや世界文化遺産もの。半抽象はいくつかあるものの、純粋抽象は1点もない。ヌードも大木基彰の《横臥裸婦》1点のみ。ヌードは入選しないとわかっているから誰も応募しないのか。だとしたら大木の英断は称賛に値するかもしれない。明治時代じゃあるまいし。ちなみに、落書きをモチーフにした作品が日本画と洋画にそれぞれ1点ずつあった。小野美恵子の《みさきちゃん》と、藤井真之の《路上》だが、日本画の小野のほうがずっと楽しげだ。どうせならバンクシー並みのグラフィティとかシュレッダー絵画を出してくれよ。

会場には、周囲にヘコヘコしながら笑顔を振りまく宮田亮平文化庁長官の姿が。以前は気さくな藝大学長が長官になってよかったと好意的に見ていたが、いまや芸術より権力におもねるお調子者というイメージが染みついてしまった。残念なことです。

2019/11/01(金)(村田真)

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