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カタログ&ブックス | 2019年12月1日号[テーマ:印象派の印象がくつがえる5冊]

2019年12月01日号

月替わりのテーマに沿って、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。今月のテーマは、「印象派の印象がくつがえる5冊」。横浜美術館で開催中の「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展(2020年1月13日まで)や、三菱一号館美術館の「印象派からその先へ─世界に誇る吉野石膏コレクション展」(2020年1月20日まで)、東京都美術館の「コートールド美術館展 魅惑の印象派」展(2019年12月15日まで)など、関東近郊ではこの秋冬、印象派にちなんだ展覧会が盛りだくさん。今月は、美術展テーマの花形のように語られることも多い印象派のイメージを更新してくれる5冊を選びました。

※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





印象派という革命

著者:木村泰司
発行:集英社
発行日:2012年3月29日
定価:2,286円(税抜)
サイズ:四六判、224ページ+口絵40ページ

「なぜ日本人は『印象派』が好きなのか」という素朴な問いかけから始まり、モネ、ドガ、ルノワールといった印象派の代表的な作家や、ベルト・モリゾ、メアリー・カサットなどの女性作家たちにも一人ずつクローズアップし、その生涯や作品に込められた感情などを紐解いていきます。印象派の成り立ちや彼らを取り囲む時代状況など、歴史の文脈から印象派への理解を深めるのにも適した一冊。

ルノワールへの招待

編集・発行:朝日新聞出版
発行日:2016年4月7日
定価:1,600円(税抜)
サイズ:B5判並製、95ページ

印象派の作家のなかでもルノワールに着目し、さまざまなアプローチで深堀りしていく仕掛けに富んだ入門書。《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》など六つの名画の原寸大が体感でわかるページや、作品のディテールに込められたトリビアなど、ルノワール作品に対峙するときの頭のなかの解像度がぐっと上がるはずです。

モネのキッチン 印象派のレシピ(1)

著者:にしうら染
発行:秋田書店
発行日:2018年6月14日
定価:453円(税抜)
サイズ:17×11cm、119ページ

印象派を「食」の観点からほのぼのと描く、いままでにないマンガ作品。モネとその友人ルノワールの若年時代、お金がなかったがゆえの料理への偏愛が描かれています。19世紀フランスの庶民の食生活が覗けるという意味で「食」マンガ好きの方にもおすすめ。全2巻。

小林秀雄全作品 22 近代絵画

著者:小林秀雄
発行:新潮社
発行日:2004年7月
定価:2,000円(税抜)
サイズ:19×13.2cm、333ページ+図版16ページ

文芸批評家・小林秀雄が50歳のとき(昭和27年)にパリで観て歩いたモネ、セザンヌ、ドガ、ピカソなどを論じた一冊。印象派の人物列伝としても読みごたえは充分で、画家たちの人間関係や時代の雰囲気、そして彼らがつくり出す色彩と美の描写の厚みに唸ります。

印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ(NHK出版新書)

著者:中野京子
発行:NHK出版
発行日:2011年6月
定価:1,000円(税抜)
サイズ:新書判、211ページ

『怖い絵』シリーズで人気を集める著者が、印象派の画家たちが生きた時代を社会的背景から読み解く一冊。政治/経済/文化など、あらゆる側面で激動の渦中にあった19世紀後半のパリは、当時の画家たちになぜあのような光に満ちた色彩を描かせ、印象派を花開かせたのか。その裏にあった格差社会のリアルにも言及する本書は、印象派の見方を大きく変えてくれるかもしれません。





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2019/12/01(artscape編集部)

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