artscapeレビュー

アルフレッド・ジャー展 The Sound of Wind / 風の音

2019年12月01日号

会期:2019/10/04~2019/11/02

KENJI TAKI GALLERY / TOKYO[東京都]

オペラシティに行く途中、開いてるみたいなので寄ってみた(会期はとっくに終わっている!)。アルフレッド・ジャーは昨年発表された第11回ヒロシマ賞を受賞したチリ生まれのアーティスト。今回はヒロシマ賞に因んで核をテーマにした作品が展示されている。

ギャラリーの中央に据えられたライトテーブルの上に、三つのキューブが置かれ、各面にそれぞれ「HI」「RO」「SHI」「MA」、「NA」「GA」「SA」「KI」、「FU」「KU」「SHI」「MA」の文字が刻印されている。みんな4音ずつであることにあらためて気づく。見ていたら急にライトテーブルが消えた。しばらくするとゆるやかに点灯し始める。光のエネルギーを感得させる仕掛けか。壁には三つの時計がかかり、それぞれ8時15分、11時2分、2時46分を指し示している。前2者は原爆が投下された時刻、後者は地震の発生時刻だが、よく見ると長針と短針は止まっているのに、秒針だけは動き続けている。

よく考えてつくられているなあと感心する一方、ふと「HIROSHIMA」「NAGASAKI」と「FUKUSHIMA」を同列に並べていいのだろうか、とも思う。核による甚大な被害を被った点では同じだが、前2者は戦争により人為的に投下され、何万もの人命を奪った大量殺人であるのに対し、後者は原発事故。福島の人はヒロシマ、ナガサキと同列に並べられ、モニュメンタルに作品化されてどう思うだろう? 逆に広島、ナガサキの人たちは? こういう社会問題を扱うのは難しい。

2019/11/12(火)(村田真)