artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
ニコラ・ビュフ「タワワップ」
会期:2010/01/12~2010/02/06
メグミオギタギャラリー[東京都]
銀座5丁目の極小スペースから、昭和通りを越えた2丁目の広大なスペースを確保。地下だから天井も1.5倍くらい高くなったので、壁全体の面積は以前より1ケタ増えた印象だ。その壁面全体を使ったドローイング。白い壁面に黒で大まかにペイントし、その上に白いチョークのようなもので装飾的イメージを描いていくという手法だ。古今東西のイコンが混じりあい、地と図のバランスも絶妙。作者は東京藝大に通うフランス人で、アニメオタクかと思ったら、日本に限らず幅広くアニメやマンガなどの図像を吸収しているらしい。これはすごい。すごいけど、壁面ドローイングに力を注ぎすぎて売り物がまだあまりないらしい。
2010/01/21(木)(村田真)
東京芸術大学先端芸術表現科卒業/修了制作2010
会期:2010/01/16~2010/01/24
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
いつになく暗い。物理的に暗いなかで見せる作品も多いが、それより死とか血とか貧とかネガティヴなものをあつかった作品が目につくのだ。貧乏で血に飢えて死期が近い私の気のせいだろうか。それ以外で気になった作品をあげると、カーペットと壁に家具の痕跡だけを残した(描いた)山田繭、ショベルカーの表面の塗装がなくなるまで磨いた柏崎由璃香。しかしこれらもある意味で「ネガティヴ」だ。一方、厖大なドローイングを見せた文谷有佳里と老田真衣や、クレーン車に筆をもたせてドローイングさせた鄭萬英は、少なくとも生産的な「描く」という行為に賭けている点でポジティヴに見える。だが見方を変えれば、日々ドローイングに逃げているともいえるし、機械に描かせるしかないという諦念が感じられるのも事実。やっぱり暗いな。ウクライナ。
2010/01/18(月)(村田真)
修了制作内覧会2010
会期:2010/01/16~2010/01/17
東京藝術大学取手校地[茨城県]
油画第4研究室に壁画第1、2研究室の院生による合同展示。大阪の橋本敏子ちゃんと一緒に講評会に呼ばれたのだ。でなければ行くか取手まで。興味深いのは壁画研究室。いまどき壁画をやるやつなんてあまりいないのに、第2研究室まである。大学の思惑がどこにあるのか知らないが、ぼくがおもしろいと思うのは、壁画という絵画形式はプライベートに所有することができないから、おのずとパブリックな性格を帯びること。そのせいか、研究室のひとつを担当する教官は中村政人で、その下には社会にコミットしようとする学生が集まって来る。そういえばかつて小沢剛も壁画出身だった。だから壁画研究室はなにもフレスコ画やモザイクといった技法を学ぶだけでなく、いかに社会にアートが関わっていけるかを探る場所でもあるだろう。そこを自覚的に推し進めれば、もっとおもしろい人材を輩出するはず。なるほど、『地域の力とアートエネルギー』の著書のある橋本さんをわざわざ大阪から呼んだ理由がわかった。
2010/01/16(土)(村田真)
俺のモナリザ
会期:2010/01/12~2010/01/15
東京藝術大学学生会館2階展示室[東京都]
上記「デジタル展」の副産物みたいな展覧会。モナリザをモチーフにした新作もあれば、昔描いた彼女(現妻)のポートレートでお茶を濁したり(佐藤教授だ)、まったくモナリザとはほど遠い抽象画を出すやつもいたり。まあ余興みたいなもんですか。余興ついでに、本日の金獅子賞はその抽象(みたいな)伊勢周平に決定。
2010/01/14(木)(村田真)
絹谷幸二「生命の軌跡」
会期:2010/01/05~2010/01/19
東京藝術大学大学美術館[東京都]
退官記念展なので、学生時代の絵から最新作まで出している。立体もあって一見華々しくバラエティに富んでいるが、立体はよく見ると正面性のある書割りだし、絵画は団体展のために制作したらしくほとんどサイズが同じで、なにかうすら寒さを感じる。入口には花輪がいっぱい並んでいた。政治家や画材店のほか、高橋英樹、石井竜也からの花輪も。夜の交遊がうかがい知れる。
2010/01/14(木)(村田真)