artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
NO MAN'S LAND──創造と破壊
会期:2009/11/26~2010/01/31
フランス大使館[東京都]
解体前のフランス大使館旧庁舎を舞台にした展覧会。期待したほどではなかったなあ。作家の選択を誤った気がする。この時期は別館で東京藝大の展示もやっていて、そっちのほうがおもしろかった。とくに、カメラや双眼鏡にセンサーを組み合わせ、人が近づくと動いたり光ったりする装置を廊下や階段に設置した笹川治子の《セキュリティーシステム》がすばかしい(すばらしく、ばかばかしい)。村田真賞だ。
2009/12/19(土)(村田真)
MAMプロジェクト010 テレルヴォ・カルレイネン+オリヴァー・コフタ=カルレイネン
会期:2009/11/28~2010/02/28
森美術館ギャラリー1[東京都]
世界各地で市民の不平不満を聞いて合唱曲にし、市民に歌ってもらうというプロジェクト「不平の合唱団」の映像。おもしろいけど、こういうのはこういう場所で見せるより、テレビ(公共放送)で見てみたいなあ。
2009/12/19(土)(村田真)
ヤン・フードン──将軍的微笑
会期:2009/12/19~2010/03/28
原美術館[東京都]
映像作品。なかでもタイトルにもなった《将軍的微笑》は、1階のメインギャラリー全体を使った大作。細長い展示室に白いクロスをかけたテーブルを置き、上から料理の映像が映し出される。大勢で食事しているという設定だ。ローマ時代の饗宴や最後の晩餐を現代の中国にダブらせているのだろうか。原館長が思わず子ども時代にこの場所(リビング・ダイニングルームだった)で体験したことを思い出したというほど、五感に訴えるものがある。周囲のモニターでは老将軍のストーリーが語られるが、そんなのはつけたしにすぎない。
2009/12/18(金)(村田真)
DOMANI・明日展 2009
会期:2009/12/12~2010/01/24
国立新美術館[東京都]
文化庁海外研修制度で海外に派遣された12人のアーティストの成果発表展。派遣先も作品傾向もてんでばらばらなのになんの意味があるんだろうと思っていたが、たしか行政刷新会議の事業仕分けでも「成果が見えない」とか指摘されていたから、発表することに意義があるのだろう。ちなみに派遣国は半数の6人がアメリカを選び、イギリスとイタリアが2人ずつ。伊庭靖子や吉田暁子らも捨てがたいが、今年のサプライズは藤原彩人。陶を素材に人物をレリーフ状に彫り、着色までしてある。《Swimming Woman》なんか幅4メートル近い不気味な天女像だ。こんなのつくってどうすんだ。
2009/12/15(火)(村田真)
医学と芸術展
会期:2009/11/28~2010/02/28
森美術館[東京都]
ひとことでいえば「医学と芸術の出会い」なのだが、医学の概念も芸術の概念も拡大し続ける一方なので、かなり大風呂敷を広げた印象だ。展示はレオナルドの解剖図から、エジプトのミイラ、死体を樹脂で固めて薄切りにしたプラスティネーション、義手・義足・義眼、手術用具、デミアン・ハーストの手術中の絵、やなぎみわや松井冬子の作品まで、じつに多彩で満腹感がある。どうでもいいけど、医者であり、初めて聖母子像を描いたとされる(もちろん伝説だが)、つまり医学と芸術の最初の接点ともいうべき聖ルカについて、展示でもカタログでも触れられてないのはなぜだろう?
2009/12/13(日)(村田真)