artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
山下麻衣+小林直人
会期:2009/11/14~2009/11/28
Takuro Someya Contemporary Art[東京都]
キリンの上半身に着せるため、動物園で黄色に茶色い斑点の巨大セーターを編む。犬ゾリの犬を、犬模様の布をかぶせたリモコンカーに代えて引っぱる。芝生の上を∞に歩き続け、無限大を刻みつける。人間の顔の毛穴に棲むダニを顕微鏡でのぞいてドローイングを描く。現代美術の王道を行くような正しいナンセンス作品。
2009/12/04(金)(村田真)
あいちトリエンナーレ2010 記者発表
会期:2009/12/03
東京国際フォーラム・ホールD5[愛知県]
2010年8月に始まる「あいちトリエンナーレ」、テーマは「都市の祝祭」。芸術監督の建畠晢がいうように、あってもなくてもいいようなテーマだが、会場は愛知芸術文化センターと名古屋市美術館のほか、商店街や公園など街なかにも出ていくというから、いちおう都市性がひとつの売り物らしい。もうひとつの売りは、ダンス、音楽、演劇など舞台芸術も行なうこと。前回の横浜トリエンナーレが試みたパフォーマンス・アートではなく、こちらはパフォーミング・アーツだ。どう違うかというと、アート志向かエンタテインメント志向かの違いですかね。出品予定作家は、80代の草間彌生が飛び抜けて年長で、あとは蔡國強、西野達、島袋道浩、ヤン・フードン、淺井裕介など50代かそれ以下。舞台公演では、ヤン・ファーブル、ローザス、チェルフィッチュなど。はっきりいってあっちこっちからおいしそうなところをお取り寄せした感じで、あいちならではの強烈な個性や主張が伝わってこないが、そのリキミのなさがミリキかも。なにいってんだか。総予算は約14億円。村上隆の作品1点で賄えるぞ。
2009/12/03(木)(村田真)
母袋俊也 展
会期:2009/11/30~2009/12/19
ギャラリーなつか[東京都]
ここ数年「絵画のための見晴らし小屋」シリーズの発表が多かったが、久しぶりの「Qf系」シリーズの展示。これは正方形の支持体にアンドレイ・ルブリョフのイコンと阿弥陀如来像の手のイメージをダブらせたものだが、興味深いのは支持体の側面を皿のように薄く削って厚みを見せないようにしてあること。しかも壁にただ並べるのではなく、仮設壁でギャラリーを仕切り、テーブルを置いてドローイングを並べるなど、会場をまるで自分のスタジオのように変えてしまっている。内側からも外側からも絵画を追いつめようとしている。
2009/12/03(木)(村田真)
伊藤雅恵 展
会期:2009/11/14~2009/12/26
鎌倉画廊[神奈川県]
駅まで戻ってタクシーに分乗し、いざ鎌倉画廊へ。銀座にあったころにはよく行ったが、鎌倉に移ってから初めて訪れる。画廊は3フロアに分かれ、小さな美術館並み。伊藤さんは咲き乱れる花のような清新なイメージをペインタリーなタッチで描く若い画家。新作では顔らしきものが出てきて、これからどうなっちゃうのか楽しみでもあり不安でもある。
2009/11/28(土)(村田真)
内藤礼「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」
会期:2009/11/14~2009/01/24
神奈川県立近代美術館鎌倉[神奈川県]
BankARTスクールの元生徒たち6人と、いざ鎌倉へ。新館(といっても1966年の竣工なので老朽化している)が閉鎖中なので、本館と下のピロティでの展示。本館の作品は、豆電球を10個ほど花丸形につなげたものが18輪、陳列ケースに置かれている。かたわらにはガラス瓶や風船やたたんだ布も。展示室の照明は消され、明かりは豆電球のみ。陳列ケースには入ることもできる。つまり展示室全体をひとつの異様なインスタレーションにしてしまったというわけ。この美術館をこんなふうに使った作品は初めて見た。繊細にして強度のある世界を構築できる内藤ならではの展示。
2009/11/28(土)(村田真)