artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

束芋「断面の世代」

会期:2009/12/11~2010/03/03

横浜美術館[神奈川県]

暗い。エントランスホールからして暗い。ここはグランドギャラリーという名のムダな空間なのだが、その広大な壁面に映像を映し出して有効活用している。展示室も暗い。5点のアニメ・インスタレーションが中心なので暗いのは当然だが、挿絵やドローイングを展示してある部屋も暗いから、束芋のダークな世界を強調しているのだろう。スクリーンも縦に3面凹型に角度をつけていたり、半円筒形の内側に映し出したり、よく計算されている。髪がゆらゆら揺れる《油断髪》は戦慄的。

2009/12/11(金)(村田真)

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アートの課題

会期:2009/11/21~2010/01/17

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

段ボール箱が散乱している。なかをのぞくと、箱の奥にスクリーンのように映像が映し出され、その前の箱にプロジェクターが隠されている。しかも手の込んだことに、箱には出入口みたいな造作がしてあってちゃんと劇場っぽくなっているのだ。段ボール劇場。そこで流される映像も、ニューヨークあたりの路上の水たまりに小さな舟を浮かべて風で走らせるという、いかにも段ボール劇場にふさわしいプログラム。これはすばらしい。たまにこういうヒット作に出会えるからTWSはあなどれない。作者は照屋勇賢。あとふたり作品が出てたけど霞んでしまった。

2009/12/08(火)(村田真)

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M-ポリフォニー09

会期:2009/12/07~2009/12/12

東京造形大学大学院棟1階ギャラリー[東京都]

大学院2年の4人展。タイトルの「M」は担当教授の母袋俊也のイニシアルかと思ったら、ドイツ語の「Malerei(絵画)」のMだった。薄く解いた絵具でサラッとファッションやぬいぐるみなどを描いたり、ブランドもんの紙袋でインスタレーションした佐藤翠、タダモノではないな。勝手にM賞だ。

2009/12/07(月)(村田真)

文殊の知恵熱「アイニジュウ」

会期:2009/12/05~2009/12/06

アートコンプレックス・センター[東京都]

とうじ魔とうじ、松本秋則、村田青朔によるパフォーマンス。「アイニジュウ」というタイトルは結成20周年記念公演だからだそうだが、「I need you」という意味もあるらしい。やってることは、物や音や行為によるダジャレやシリトリ。いいかえれば、言葉を使わない言葉遊び。

2009/12/06(日)(村田真)

柳正彦『クリストとジャンヌ=クロード──ライフ=ワークス=プロジェクト』出版記念パーティー

会期:2009/12/04

ザ・マーケットオークションギャラリー[東京都]

「これからクリストに会いにニューヨークへ行く」という青年を京橋の画廊で紹介されたのは、たしか1980年前後のこと。以来30年近くニューヨークに住みつき、クリスト夫妻の片腕としてそのプロジェクトを間近に見てきた柳正彦による、クリスト&ジャンヌ=クロード論の決定版。もっとも身近にいるひとりだけに、解説は微に入り細を穿ち、写真も最高のものを使っている。これをひもとけば、いかにクリストたちが現在のアートプロジェクトの先駆けとなっていたか、そして、いかに現在各地で行なわれているアートプロジェクトと落差があるかもよくわかる。柳にとっての、そしてなによりクリストにとっての痛恨の出来事は、2週間ほど前にジャンヌ=クロードが亡くなったことだ。

2009/12/04(金)(村田真)