artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
応挙館で美術体験
会期:2009/11/17~2009/11/26
東京国立博物館庭園内応挙館[東京都]
東博は奥が深い。平成館の裏手に応挙館があるなんて知らなかった。もともと寺の書院として建てられたものだそうだが、円山応挙の襖絵があることから応挙館と呼ばれるようになった。現在は茶室として使われ、襖絵もレプリカに替えられている。今回はその一之間で応挙作品を体験し、二之間で鯨津朝子の制作したドローイング・インスタレーションに触れ、江戸時代と現代をワープしちゃおうとの試み。さすがの鯨津も応挙の絵に上描きはしなかったものの、畳や白壁には直接ドローイングしている。ま口実はどうあれ、重要なのは鯨津が応挙館にラクガキしちゃったこと、東博がそれをやらせちゃったことですね。これは快挙、円山快挙。
2009/11/17(火)(村田真)
古代ローマ帝国の遺産
会期:2009/09/19~2009/12/13
国立西洋美術館[東京都]
これまで西洋美術館で古代美術をやったことあったっけ。コレクションはルネサンス以降だし、と思って調べてみたら、そうそう1964年の「ミロのヴィーナス特別公開」を忘れていた。以来10年に1度の割合で開いてる。今回は館長の青柳正規が古代ローマの研究者だから納得の企画。出品はおもにポンペイとその周辺で発掘された絵画、彫刻、日用品などだが、なんといっても注目したいのはフレスコ画の美しさだ。巧みな筆づかいでサラサラッと描いている。でもこれらのフレスコ画で古代ローマの「絵画力」を推し量ってはいけない。だってこれらの壁画はいまでいえば壁紙みたいなもの。アペレスのようなもっと巧みな画家はタブローを描いたのかもしれないけど、ひとつも残っていないからね。
2009/11/17(火)(村田真)
吉岡宣孝 展「全景」
会期:2009/11/09~2009/11/15
トキ・アートスペース[東京都]
街なかに立ち、足下から頭上まで少しずつ風景を写していく。少し角度を変えてまた足下から頭上まで……を繰り返し撮った写真をつなげて円形または螺旋形に構成した作品。ホックニーの写真作品に近いが、吉岡のは全方位が収められ、しかも昼─夜─朝と時間の推移も写し出されている。もっと精度を上げればかなりおもしろいものになりそう。しかし1日中街なかに立って足下から頭上まで写真を撮るわけだから、ハタから見れば変なおっさんだろうなあ。
2009/11/14(土)(村田真)
神戸ビエンナーレ2009
会期:2009/10/03~2009/11/23
メリケンパークほか[兵庫県]
そして、神戸ビエンナーレ。美術館近くの船着場からメイン会場のメリケンパークまで船で行ったのだが、その途中の防波堤に出色の作品が。突堤の上にコンクリートの板を斜めに置いた植松奎二の《傾くかたち》と、30年前のBARローズチューを再現した榎忠の《リバティ・アイランド》。メリケンパークには前回同様コンテナが70個近く並んでいるが、そのうちの約半分はいけばなや陶芸なので見ない。見るのはコンペで入賞した「アートインコンテナ国際展」だけ。作品は、暗くて密閉されたコンテナ空間の特性を生かして映像や光を使ったものが多いが、まあ9割は見るに値しない。大賞を受賞した戸島麻貴の《ビヨンド・ザ・シー》も映像だが、さすが見ごたえがある。床に白い砂を敷き、上から映像を流す趣向で、波打ち際の海岸や花畑などの映像が音とともに歯切れよく移り変わっていく。見ていて気分がいい。戸島、やったな。
2009/11/13(金)(村田真)
LINK──しなやかな逸脱
会期:2009/10/03~2009/11/23
兵庫県立美術館[兵庫県]
信楽から船に乗って神戸に着いた。ウソ。石山からJRに乗って来ましたよ。ただ、京都で新幹線に乗り換えて新神戸まで行ったのは失敗だった。新快速で直接三宮まで行ったほうがずっと安く、時間もそれほど変わらなかったからだ。よし次回は新快速だ。ってもう2度とミホまで行くか。「リンク」は神戸ビエンナーレの1企画で、招待作家部門という位置づけらしいが、街を活性化させようと始まったビエンナーレなのに、美術館内でやるってのもどうよ。しかも出品作家12人のうち絵画が4人を占めていて、なんか内向きでないか。そんななか、唯一美術館を外に開こうとしたのが島袋道浩だ。美術館の手前の海に面した巨大な地下施設を開放したのだ。この空間は雨水をためる貯水槽のような役割をはたしているらしく、鍾乳洞のようにつららまで垂れ下がっている。入口でヘルメットを渡され、「事故があっても知らないよ」みたいな誓約書にサインさせられて入っていく。美術館のバックヤードツアーというのはあるが、これは美術館とは直接関係ない施設。よく開放したもんだ。
2009/11/13(金)(村田真)