artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

上畠益雄「チヨガミックスの世界」

会期:2009/05/09~2009/05/31

創造空間9001[神奈川県]

カラフルな千代紙の柄を使ったペーパークラフトやCG作品の展示。見た目にも明るく華やかなせいか、現代美術展とはケタ違いにたくさんの人が立ち寄るという。もともと駅舎を改装したスペースだけに人通りは多いのだが、現代美術だと敬遠されてしまうらしい。恐るべし千代紙。

2009/05/11(月)(村田真)

原口典之 展「社会と物質」

会期:2009/05/08~2009/06/14

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

原寸大に再現されたスカイホークの尾翼、10×5メートルの廃油のプール、重さ10トンの巨大ゴムチューブ……。重厚長大の代名詞みたいな作品群が質実剛健な倉庫空間に、ようやく終の住処を見つけましたみたいな風情で鎮座している。たとえば、3階の部屋を仕切る黒い鉄の扉の向こうに、黒い正方形のポリウレタン作品が並んでいるのは偶然ではないはず。作品と建築がいたるところ共鳴しているのだ。もうこのまま原口典之美術館にしてしまったらどうだろう。

2009/05/08(金)(村田真)

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日本の美術館名品展

会期:2009/04/25~2009/07/05

東京都美術館[東京都]

全国約100館の公立美術館から、選りすぐりのコレクション計220点を集めた名品展。なんの意味があるのかと思ったら、美術館連絡協議会(美連協)の創立25周年記念ということらしい。しかし「さすがに名品が集まった」とは残念ながら思えず、「なんだ、かき集めてもこの程度か」というのが正直な感想。これぜーんぶ合わせたってヨーロッパじゃ三流美術館だろうなあ。セガンティーニ(ふくやま美術館)、エゴン・シーレ(豊田市美術館)、ピカビア(広島県立美術館)、岸田劉生(新潟県立近代美術館万代島美術館)、甲斐庄楠音(広島県立美術館)など興味深い作品もあったが。

2009/05/07(木)(村田真)

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創造界隈のアーティストたち vol.1

会期:2009/05/01~2009/05/17

ヨコハマ・クリエイティブシティ・センター[神奈川県]

BankART1929として使われていた旧第一銀行の建物が、横浜市芸術文化振興財団のYCC(ヨコハマ・クリエイティブシティ・センター)としてリニューアルオープンした。その記念として横浜を拠点とする10人のアーティストが、1階ホールのアーチ型の細長い窓をキャンヴァス代わりに作品を制作。いつものように予算がない、時間もないという絶望的な状況下、いかにアイディアだけで勝負するかが問われた。フランシス真悟は色違いの透明シートをステンドグラスみたいに貼りつけ、増田拓史は渋谷の路上をフロッタージュしたものをシルクスクリーンで刷り、シムラブロスは窓をシートでおおって映像を流し、笛田亜希はカモメを数匹「だまし絵」のように描く、といった調子で、同じ条件にもかかわらずアイディアはきれいに分散した。貧すれば鈍するで、もっとかぶるかと思ったのに、いい意味で裏切られた。でもこうやってカネもヒマもなくアーティストがこき使われるのを見ると、なにが「創造界隈のアーティスト」だ「クリエイティブシティ」だといってみたくもなる。

2009/05/05(火)(村田真)

池田亮司 +/- [ the infinite between 0 and 1]

会期:2009/04/02~2009/06/21

東京都現代美術館[東京都]

1階では、暗い部屋に細かい数字を打ち込んだ彫刻を浮かび上がらせたり、デジタル映像を壁面いっぱいにプロジェクターで流したり。地下1階では逆に床まで白いホワイトキューブに黒い彫刻を置き、対比を強調している。内容はともかく、形式的にはミニマル、コンセプチュアルな色彩、形態、演出をベースに、デジタルメディアを使って光や音を採り込み、さらに靴を脱いで上がらせるという観客参加まで試みている。つまりこの展覧会、現代美術の主要な要素(おいしいところ)をほとんど採り込んでいるのだ。だから意外と飽きない。
池田亮司 +/- [ the infinite between 0 and 1]:http://www.ryojiikeda.mot-art-museum.jp/

2009/05/04(月)(村田真)

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