artscapeレビュー
牧島如鳩 展
2009年02月15日号
会期:11/8~1/12
足利市立美術館[栃木県]
今年最後に見た展覧会が本年のベスト1、とはいわないまでもベスト5には入るくらいの収穫だったから、北関東まで足を伸ばしたかいがあるというもの。如鳩(にょきゅう)はハリストス正教徒で、イコン画家として知られる山下りんの手ほどきを受けたが、一方で仏画も描き、晩年は両者が共存というか混濁したまことに奇怪な宗教画(というんだろうか)をきわめた人。キリスト教の絵と仏教画の混交は、必然的に洋画と日本画の素材・様式・表現上の混在を招き、その結果、聖母子像の掛軸や油絵による釈迦涅槃図が描かれることになる。圧巻は《魚籃観音像》。ピンクの乳首やレース越しの太股も艶かしい魚籃観音を中心に、左に聖母マリアや天使たち、右に菩薩や天女たちを配したオールスター夢の競演だ。これが小名浜港の漁業組合の依頼で大漁祈願のために描かれたというから驚く。バチ当たりな気もするが、以来この港では豊漁が続くというからもっと驚く。まったく神も仏もあったものだ。
2008/12/26(金)(村田真)