artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
白蟻の巣
会期:2017/03/02~2017/03/19
新国立劇場 小劇場 THE PIT[東京都]
谷賢一演出「白蟻の巣」@新国立劇場。光を劇的に扱った演出が美しい。三島由紀夫の戯曲だが、構造と寓意を組み込んだすごい作品である。異国に移住した2組の夫婦のX関係を軸に、死と生、敗戦後の日本とブラジル、赦しと残酷が、複雑なポリフォニーを奏でる。もう60年前に書かれた作品だが、まったく古さを感じさせない普遍的な価値を持った古典と言うべきか。また、三島の最期にもつながる内容だ。
2017/03/15(水)(五十嵐太郎)
アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
会期:2017/01/14~2017/03/20
NTTインターコミュニケーション・センター[ICC][東京都]
メカニカルな光のダンスが楽しめる。吉岡徳仁がマテリアルの自然/性質を引き出すのに対し、タイトルどおりの内容であり、デジタル技術を用いた光の表現の現在を示す。かといって、オラファー・エリアソンのような科学アートとも違う。
2017/03/15(水)(五十嵐太郎)
草間彌生 わが永遠の魂
会期:2017/02/22~2017/05/22
国立新美術館[東京都]
初期から制作意欲が衰えない現在までを一気に見せる。さすがにほとんどの作品は知っているので、過去のインスタレーションによる展示を再現した空間がよかった。彼女の基本的なスタンスは変わらないが、初期の日本美術特有の暗さが、ある時期から吹っ切れて、明るくなったことにより、世界的な作家に飛躍したことがわかる。
2017/03/15(水)(五十嵐太郎)
ミュシャ展
会期:2017/03/08~2017/06/05
国立新美術館[東京都]
なんと言っても目玉のスラブ叙事詩全20作の国外初展示が圧巻だった。新国立美術館の天井高をフルに活かし、6m×8mの巨大絵画群が並ぶ。若い頃、アカデミーに入れず、かわいい女性の絵のポスターで人気を博したサブカルチャー的な出自のミュシャが、スラブ民族主義に目覚めた渾身の大作である。そして、彼は国民的な作家となった。
2017/03/15(水)(五十嵐太郎)
吉岡徳仁 スペクトル ─ プリズムから放たれる虹の光線
会期:2017/01/13~2017/03/26
資生堂ギャラリー[東京都]
同じ天高ながら大小の部屋が斜めに接続する個性的(?)な空間の特質を活かし、スペクトルの光によるインスタレーションを展開するなど、さすがの演出だった。過去作の映像も、余計な説明なしにヴィジュアルだけでほとんどわかる鮮やかなデザインが続く。ただ、一連の作品のなかで、ガラスの茶室だけはどうしてもキッチュに思え、茶室の本質と違うのではないか。
2017/03/13(月)(五十嵐太郎)