artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

岩瀬諒子/岩瀬諒子設計事務所《木津川遊歩空間》

[大阪府]

大阪の西長堀から《木津川遊歩空間》へ。水都大阪の水辺再生コンペで、岩瀬諒子さん(U-35参加)が選ばれ、既存護岸の外側に段状の親水空間を張り出す。通常の土木と違う建築的ランドスケープだ。現場で岩瀬さんと遭遇、春に道路側との連結部も完成という。今後の使われ方、街への影響が興味深い。

2017/02/24(金)(五十嵐太郎)

神勝寺《松堂》《洸庭》

[広島県]

福山駅から神勝寺へ。まず入り口で藤森照信が設計した《松堂》が出迎える。屋根のてっぺんに赤松をのせたテクスチャー建築であり(すなわち、テクトニックではない)、ほっこりさせる。神勝寺のエリアはかなり広く、1970年代のコンクリート寺院から古建築の移築や石山寺多宝塔の写しなどを散りばめる。
最後に名和晃平+SANDWICHによる《洸庭》を見学した。ブリッジを渡り、ダイナマイトで砕いた岩を並べた石の海原をぐるぐるまわって、ピロティで支えられた「山あいに浮かぶ舟のような建築」に到達する。屋根以外の表面がすべて杮葺きの建築であり、窓がない。下から船底を見上げる空間体験もきわめてユニークだ。そして《洸庭》の内部に驚く。ドアを抜けると、真っ暗闇で何も見えない。まるで演目「VESSEL」の冒頭のようだ。かすかな光源が揺れる水面に煌きながら、コンピュータではつくれない、複雑な映像的効果を生み出す。およそ25分のプログラムは、世界の創造のようだ。外部ではなく、内部に無限の海原を抱えた建築である。

写真:左上2枚=藤森照信《松堂》左下3枚=神勝寺敷地内、右上5枚=名和晃平+SANDWICH《洸庭》、右下=神勝寺模型

2017/02/23(木)(五十嵐太郎)

中村拓志《Ribbon Chapel》《エレテギア キッチン&ダイニング》

[広島県]

続いて、ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道へ移動。中村拓志が設計した二重螺旋の構造による《リボンチャペル》を見学する。男女がそれぞれの階段を登り、頂上で2人が出会い、一緒に降りるという演出だ。改めて、これだけ最小の建築で、BCS賞を受賞したとは快挙である。そして浮かぶような屋根のレストランの《エレテギア》(これは昨年のJCDデザインアワードにおいて2位)、玄関まわりなどのリノベーションを見学する。もともとは船乗りを対象としたホテルだったが、ツーリズムやウエディングに力を入れ、現場では、スイートルームなど、さらにホテルの改造を進めていた。

写真:左=《Ribbon Chapel》、右上4枚=《エレテギア キッチン&ダイニング》、右下2枚=ホテルの改造の様子

2017/02/23(木)(五十嵐太郎)

藤本壮介《せとの森住宅》

[広島県]

藤本壮介による《せとの森住宅》へ。二戸を合体させてひとつの建築とするニコイチのため、日本としては大きな家型のヴォリュームが13棟、造成地にランダムな方角で並べられている。迷いがなさそうに見えるのが、藤本さんらしい。もっとも、社宅ゆえに、塀や垣根がなく、あいだを通り抜けられる開放的なレイアウトが可能になったと思うが、通常はなかなか実現させるのが難しい。

2017/02/23(木)(五十嵐太郎)

原田真宏+原田麻魚/MOUNTO FUJI ARCHITECTS STUDIO《Seto》

[広島県]

マウントフジの集合住宅《Seto》へ。端部のタワー棟でバランスを取りながら、海に面した傾斜地に思い切りキャンチレバーで張り出しつつ、上部では地域に開かれた大きなテラスを提供する。今回、このエリアで興味深い建築が続々と誕生しているのは、常石造船が施主になり、フェリエ肇子のコーディネイトゆえという背景を知る。

2017/02/23(木)(五十嵐太郎)