artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

Chim↑Pom展「The other side」

会期:2017/02/18~2017/04/09

無人島プロダクション[東京都]

清澄白河で強烈だったのは、Chim↑Pom「The other side」展@無人島プロダクションである。2014年に開始したアメリカとメキシコの国境沿いのプロジェクトだが、いまのトランプ政権の振る舞いをあらかじめ批判するような作品だ。ヨーゼフ・ボイスを下敷きとしたコヨーテ、穴、ツリーハウス、自由の墓などを紹介していたが、いまや政治主導で増加するアール・ブリュットからは絶対に生まれない批評的な表現である。

2017/03/12(日)(五十嵐太郎)

マルセル・ブロイヤーの家具 Improvement for good

会期:2017/03/03~2017/05/07

東京国立近代美術館[東京都]

歴史的に有名になった家具を取りあげた、渋い展覧会だ。ワシリーチェアをハイライトとしつつ、ほかの家具や建築デザイン、そして、ブロイヤーの事務所で働いた芦原義信との交流や、彼の日本滞在などを紹介する。それにしても、このスチールパイプを生かしたクラブチェアを23歳で考案していたとは驚きだ。時代のめぐりあわせかもしれないが、いまの大学院生くらいの年齢である。

2017/03/11(土)(五十嵐太郎)

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パロディ、二重の声 日本の1970年代前後左右

会期:2017/02/18~2017/04/16

東京ステーションギャラリー[東京都]

テーマがパロディだけに、一部の作品を除き、撮影自由だった。1960年以降の現代美術と1970年代のサブカルチャー(ビックリハウスや漫画など)の交差を示しつつ、最後のパートはマッド・アマノの著作権侵害をめぐる裁判の顛末を紹介する。個人的には、名古屋で刊行されていた全ページが白紙の雑誌が印象に残った。かつての自由なパロディ表現を見ながら、現在がいかに著作権でがんじがらめになり、また、すぐにネットでパクリと炎上することで、不自由な社会になったのかを思い知る。

2017/03/11(土)(五十嵐太郎)

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佐藤充/一級建築士事務所 SATO+《三本木の家》

[宮城県]

審査の最終日は、まず、佐藤充による《三本木の家》へ。震災で母屋が倒壊し、農家の敷地内に施主の父がプレハブをカスタマイズして暮らした住処や、各地で採取してきた木々や砕石、土管が散らばる風景にいきなり驚かされた。個人的には、エンジンを抜いた自動車などが庭に放置された、《川合健二邸》を想起させる。建築家が試みたのは、多世帯家族が住むためにシンプルな三角屋根の家をつくること。秩序と混沌が衝突する家だ。

2017/03/05(月)(五十嵐太郎)

脇坂圭一/ヒュッゲ・デザイン・ラボ、静岡理工科大学《不均質な家~201号室リノベーション》

[宮城県]

多賀城に移動し、脇坂圭一による《不均質な家》へ。津波が近くまで押し寄せたマンションの201号室のリノベーションである。断熱を施し、廊下をなくし、収納を増やし、可動家具ユニットやさまざまな素材の実験を試みた自邸のプロジェクトだ。もっとも、脇坂は東海地方に就職したため、現在は資産価値を上げた物件を貸すか売るかを検討中らしい。

2017/03/05(月)(五十嵐太郎)