artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
手島浩之/都市建築設計集団/UAPP《路地にかかる大軒》
[宮城県]
東北住宅大賞の現地審査のため、手島浩之が設計した《路地にかかる大軒》を見学した。五十嵐研出身の真田菜正が担当した物件でもある。外観は前面の道路に張り出す大きな軒を特徴とするが、一歩室内に足を踏み入れると、民芸品がセンスよく並べられた内路地、中心軸の奥にある台所、少し上がったリビングとデッキ、ロフト的な子供部屋など、内部の複雑で立体的な構成は想像をはるかに超えて豊かだ。さすが断面の魔術師である。
2017/03/01(水)(五十嵐太郎)
《赤羽台団地》
[東京都]
東京へ移動し、『東京人』としては画期的なモダニズム特集の原稿で触れるので、《赤羽台団地》を訪れた。日本住宅公団による東京の大規模なプロジェクトである。だいぶ、真新しいヌーヴェル赤羽台に建て替わってはいるのだが、それでも3,373戸も建てていたので、まだ昔の団地や時代を感じさせる遊具を備えた公園なども残っており、当初の面影がうかがえる。仙台では似たような建築の官舎に住んでいるので、親近感がわく空間だ。
写真:上2枚=《赤羽台団地》、左下=ヌーヴェル赤羽台、右下=くらげ公園
2017/03/01(水)(五十嵐太郎)
渋谷達郎と大類真光による《西根の家》/辺見美津男《すべり台の家》
[山形県、福島県]
今年も審査委員長の古谷誠章とまわる、恒例の東北住宅大賞の現地審査を行なう。ついに第10回となった。最初は山形の豪雪地帯へ。渋谷達郎と大類真光による《西根の家》を訪問する。自分の山の木を使いつつ、高齢者のひとり暮らしにとって、除雪の負荷を減らすことを考え、道路側に家を建て替えた。寄棟屋根の下、大きな開口で景色を眺めながら暮らす、のびやかな住宅である。
郡山へ移動。辺見美津男による《すべり台の家》を見学する。急勾配の売れ残った宅地を活用し、室内外とも段々の構成をつくり、ハイライトは子どもが遊ぶすべり台である。また隣のグループホームの斜面を無料で借りながら、緑化する。サービス動線はコミュニティ再生長屋と同様、片側にまとめる。その後、米蔵をリノベーションした辺見事務所において、懇親会を行なう。
2017/02/28(火)(五十嵐太郎)
ルノワール展
会期:2017/01/14~2017/04/16
宮城県美術館[宮城県]
昨年、国立新美や名古屋ボストン美術館で見たものと違う別企画だった。第1回印象派展のバレリーナ、古典風、読書する女、周囲の風景と融合する裸婦像ほか、多幸感あふれる女性像を数多く紹介する。また宮城県美のコレクション展示では、東北の画家、勝平得之と小関きみ子を特集する。前者は竹久夢二に触発され、秋田を拠点に素朴な風俗版画を描き、後者は上京して大作の日本画を描くもキリスト教信者として清貧生活を送る。いかにも「東北らしい」作家だ。常設の最後はいつもの独墺作家、シーレ、ココシュカ、ペヒシュタイン他であり、このテーマの充実したコレクションぶりをうかがわせる。
2017/02/26(日)(五十嵐太郎)
大西麻貴+百田有希/o+h《Good Job! Center KASHIBA》
[奈良県]
大西麻貴+百田有希による奈良の《GOOD JOB! CENTER KASHIBA》へ。コンペで設計者を選んだ、アートやデザインを通じた障害者の支援施設である。角地で大きく街に開く、明るくかわいい建築だった。構造を兼ねる互い違いに積まれた壁は、平面上においては斜めに配され、さまざまな場を生みつつ、奥に視線を引き込む。また2階はイケアのように、オープンな倉庫とみなし、空間を閉鎖させることなく、1階の回遊性を延長する。
2017/02/24(金)(五十嵐太郎)