artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

サラエヴォの銃声

タノヴィッチ監督『サラエヴォの銃声』を見る。第一次世界大戦の引き金となった事件から100年の式典を準備するホテルが舞台である。実在するポストモダンの建築だが、外観の描写は一切なく、カメラは徹底して、内部のさまざまな空間を動きまわりながら、人々の交錯と欧州の複雑な歴史を描く。そして最後に銃声が響くことで、ばらばらに進行していた事態に対し、一気に全体がシンクロする。

2017/02/06(月)(五十嵐太郎)

クレア・カニンガム「Give Me a Reason to Live」

会期:2017/02/04~2017/02/05

KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

障害者のダンサーである。が、彼女が使う松葉杖は、健常者と同等になるための道具ではない。彼女の身体機能を飛躍的に拡張する人工補綴であり、通常の健常者には不可能な新しい別の動きを創造するものだ。むしろ苦しそうに見えたのは、後半の杖なしにしばし立ち尽くす場面だった。そして最後に歌い出す彼女の力強い声に驚かされた。

2017/02/05(日)(五十嵐太郎)

増田彰久写真展 アジアの近代建築遺産─上海・青島・北京・大連・長春─

会期:2017/01/28~2017/04/09

横浜ユーラシア文化館[神奈川県]

中国に残る近代建築の美しい細部と装飾を丁寧に撮影した写真の数々が並ぶ。長春以外は訪れたことがあるけれど、すでに行った都市でも未見の近代建築がいろいろとあり、発見も多かった。

2017/02/05(日)(五十嵐太郎)

東北大資源探偵団

東北大学[宮城県]

今年から五十嵐研究室で東北大資源探偵団の活動を開始し、歯学部にある資料室を訪問した。京都のメーカーで製作された人体の標本模型や、マニアックな細部をもつ収納箱のデザインに感心する。また昔の実習でつくられた地形模型のような顔、抽象彫刻のような身体の一部の模型もすごい。きわめて精密な歯の造形とその進化も学ぶ。

2017/02/01(水)(五十嵐太郎)

横浜ダンスコレクション2017 ダミアン・ジャレ+名和晃平「VESSEL yokohama」

会期:2017/01/26~2017/01/29

横浜赤レンガ倉庫[神奈川県]

ぶったまげた傑作である。あいちトリエンナーレ2013の作品が展開したような泡立つ生命の島が暗闇に浮かび、水面にヘッドレス群像がほのかに見える。頭なしの身体表現により、人間とは別の進化をする異様な生物がうごめき、最後は島に上陸して泉に浸る。官能的かつ不気味だ。

2017/01/27(金)(五十嵐太郎)