artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

郵政博物館、台北二二八国家紀念館

[台湾、台北市]

未踏だったミュージアムのエリアを散策する。郵政博物館へ。新年を意識した干支の切手特集もよかったが、各国のアーカイブが充実し、日本セクションではまる。個人的にも昔収集していたが、最も絵を覚えていたのが、1976-77年発行の切手だったから、その頃に熱中していたことがわかる。それにしても昭和時代は、国立の建築がオープンするたび、記念切手が出ており、祝福されたことがわかる。無駄使いとバッシングされるいまとはまるで違う。
隣の二二八国家記念館は、かつて絵も展示した1930年代の教育館を保存し、事件の記憶を伝える施設にリニューアルする。台湾は近代建築を本当によく残しており、感心させられる。悲劇を伝える常設エリアは、リベスキンドの《ユダヤ博物館》の影響を受けたものと思われる、斜めや裂け目の展示デザインだった。企画は戦争博物館などを紹介する。

写真:左列=《郵政博物館》 右列=《台北二二八国家紀念館》

2016/12/30(金)(五十嵐太郎)

《伊東豊雄的劇場夢》觀念建築展─探索建築大師的哲學思維

会期:2016/08/26~2017/01/31

台中国家歌劇院[台湾、台中市]

1年9カ月ぶりの台中国家歌劇院へ。内装がないときは、ひょうたんの空間形式がわかりにくいのが気になったが、完成したインテリアを体験すると、それとは別の明るい洞窟の楽しさがあることに納得した。運営も開放的で大勢の来客でにぎわう。ホールのホワイエも自由に見学でき、格式のあるヨーロッパの劇場だと逆に難しいかもしれない。1階、5階、屋上にVVG系列の店舗が入り、低密度の商業スペースとしても豊かである。オープンを記念して、伊東豊雄の観念建築展が開催中だった。人気のコンテンツで、約1時間待って入場した。いくつかの模型が吊るされるなか、彼のエマージング・グリッドの幾何学的な思想を表現する映像が、うねうねした壁や床に投影される。これを観客はでかいクッションに寝転びながら、リラックスして鑑賞するのだが、なかなかよい。ところで、今回いくつか台湾ガイドを見たら、台中自体が掲載されていない、もしくはあっても、国立美術館もオペラハウスも紹介していない。日本人は美術館も建築体験も興味がないということか。

写真:左上3枚=《台中国家歌劇院》 左下=VVG系列店 右上2枚=伊藤豊雄展、右下=《台中国家歌劇院》庭

2016/12/29(木)(五十嵐太郎)

安藤忠雄《亜州大学現代美術館》

[台湾、台中市]

亜州大学の現代美術館へ。安藤忠雄の設計だが、現地に行くと彼の名前をとって「安藤美術館」の表示がある。三角形のモチーフを使い、全体から細部まで統一してデザインされている。3階に上がると、三角形の展示室から外に視界が開け、外周でサン・ピエトロ大聖堂風の図書館を含むキャンパス全体を見渡す。幾何学のルールによって生じる三角形や平行四辺形の部屋は、うまく展示に使われていたこともあり、意外と気にならなかった。

2016/12/29(木)(五十嵐太郎)

921地震教育園区

[台湾、台中市]

台中へ。921地震教育園区を初めて訪問する。1999年に2,500人近い死者を出した巨大地震のメモリアルであり、防災教育を啓蒙する施設だ。ちょうど断層の上だったために破壊された中学校を活用する。驚かされるのは、上下左右に激しくズレた運動場。さすがに、どんな屈強な構造、耐震や免震だろうと、地面が割れて、こんなに動いたら建築は絶対に壊れる。この裂け目を縫うように膜の屋根をかぶせる。設計はJAY W.CHIUほか。さらに進むと、アクリルの柱で補強した壊れた教室群が視界に入る。映像体験の展示を抜けると、ぺしゃんことしか言いようがない無惨な校舎があり、ブリッジを渡ると、上から見学できる。百聞は一見に如かず。が、日本だと、残念ながら、こういう震災遺構は残らない。

2016/12/29(木)(五十嵐太郎)

益品書屋

[台湾、台北市]

さらに仁愛路の益品書屋へ。ここもビルの一階部分が興味深い図書空間になっていた。150席あり、100元(約400円)でフリードリンク、時間制限なしで、2,500冊のヴィジュアルブックを閲覧できる。滞在時には音楽の生演奏もしていた。漫画喫茶ではなく、わりとデザイン系の本が多く、日本でもこういう場が欲しい。

2016/12/28(水)(五十嵐太郎)