artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
前田久美 展
会期:2009/01/17~2009/01/31
ギャラリー16[京都府]
展示室を埋め尽くす装飾過剰空間。スパンコール、エナメル生地、少女漫画、ぬいぐるみ、化粧品、フィギュア、etc...。そして何故かカエルの消しゴムコレクションがあり、目をモチーフにした不気味な自作オブジェも並置されている。別室には少女漫画『キャンディキャンディ』のラストシーンを思わせる平面作品も。妄想がこれでもかとばかりに詰め込まれた作品は、別室の平面以外はすべて2001年の作だが、今でも十分通用するまがまがしいパワーに満ちていた。
2009/01/24(土)(小吹隆文)
戦争と芸術III─美の恐怖と幻影─
会期:2009/01/16~2009/02/05
ギャルリ・オーブ[京都府]
真正面から「戦争」をテーマに据え、「戦争画」を出品する展覧会として過去2度の開催でも注目を集めた本展。3回目の今回も、藤田嗣治の《重爆》(1941)をはじめ、横尾忠則、宮島達男らの作品が揃い、見応えある内容となった。筆者としては、山口晃の疑似戦争画と、アンネ・フランクを想起させる主人公が登場する佐々木加奈子の写真・映像作品を見られたのが一番の収穫。戦争の記憶を隠すのではなく、公の場で議論すべきという本展の主旨には大いに賛成。むしろ公立美術館で開催すべきだと思うのだが、難しいんだろうなあ……。
2009/01/24(土)(小吹隆文)
泉洋平 展
会期:1/17~31
studio J[大阪府]
画廊の壁面を取り巻く85頭の競走馬の絵画。それらはエドワード・マイブリッジの有名な連続写真を思わせる。ところがよく見ると、それらは一頭ずつ異なっていた。頭の中で、連続する1頭と静止する85頭が重なり合う。泉の作品はいつもこんな具合だ。視覚や認識の裏をかいて、常識の向こうに広がるもう一つの可能性を示唆する。その行為を控え目に淡々と行なう点も彼の美徳と言えよう。
2009/01/17(土)(小吹隆文)
吉岡俊直 展
会期:1/15~2/8
Gallery OUT of PLACE[奈良県]
映像、CG、写真作品が出品された。映像は自宅マンションの一角に巨大な水滴が現われて、遂には雫となって落下するというもの。水滴は「恐怖」のメタファーである。シンプルな作品だが、得体の知れない怖さを見事に表現していた。写真作品は、スイカの皮の部分のみを剥き、真っ赤な果実をむき出しにしたもの。まるで肉塊のような生々しさがあり、内視鏡で初めて自分の臓器を見た時のことを思い出してしまった。
2009/01/17(土)(小吹隆文)
松山淳 個展 ダイエット菩薩「翻弄」
会期:1/13~25
立体ギャラリー射手座[京都府]
雑誌のダイエット広告で見かけるビフォー・アフターの画像を、仏像のポーズを引用して立体作品にしている。手本になったのは、みかえり阿弥陀如来(永観堂)と日光・月光菩薩(薬師寺)。メディアに翻弄されるわれわれの価値観を信仰と絡めてコミカルに表現しているのが良い。彼は以前にもモデルの四天王像やグラビアアイドルの観音様を制作しており、昨年は名古屋でそれらを一堂に集めた個展も行なっている。できれば京都で、できれば寺院で、その展示を見たいものだ。さすがに罰あたりと怒られそうだが。
2009/01/13(火)(小吹隆文)