artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
高橋耕平 個展 Take-A little action and small accident
会期:12月10日~12月21日
GALLERY RAKU[京都府]
薄型モニターに映し出された映像は、一見スチール写真のよう。しかし、じっと見続けていると、時折人物が動いたり、画面が微妙に手ぶれしていることに気付く。既成イメージに小さな仕掛けを施すことで、見る者の常識を編集し直すということか。でも、一旦気付くと、今度はそれ自体が既成イメージになってしまう。そこまで読み込むのが高橋の意図だと思われるが、いわゆる脳トレ的なサプライズで止まってしまう可能性も高い。かといってハードルを下げれば陳腐になるし。さじ加減が難しいところだ。
2008/12/16(火)(小吹隆文)
三瀬夏之介 展
会期:12月13日~12月27日
イムラアートギャラリー[京都府]
1月に東京の佐藤美術館で個展を行う三瀬が直前に京都で新作展を開催。まさかウォーミングアップでもなかろうが、多作の人らしいバイタリティが感じられる。新作は、無数のイメージが時空や遠近を超えて交錯する彼特有の画風は相変わらずだが、複数のピースを繋ぎ合わせる手法は用いられなかった(一部コラージュはあり)。インクジェットプリントによる写真画像が頻繁に用いられていたのも目新しい。また、屏風仕立てや、額装された大作があったのも新趣向だ。彼はまた新たな領域に向かおうとしているのか。
2008/12/16(火)(小吹隆文)
「さて、大山崎」山口晃 展
会期:12月11日~3月8日
アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]
人気画家、山口晃の関西初個展。豊臣秀吉と明智光秀による「山崎の合戦」や、千利休の茶室「待庵」など、歴史遺産に富む大山崎を題材にした新作が多数発表された。中でも明智光秀一行をモチーフにした《最後の晩餐》や、《摩利支天》《土民圖》などは、冴えた手腕が発揮されており見応えがあった。モネの名画や壁の染みを独自の絵画作品に見立てた新館の趣向も洒落が効いていたが、これはさすがに狙いすぎでは? 一般客にどこまで伝わるか、正直言って微妙だ。
2008/12/10(水)(小吹隆文)
益村千鶴 展「Esperanza」
会期:12月9日~12月28日
neutron[京都府]
自身をモデルにして描いた身体の断片(腕、花、唇など)が無言劇を演じているような絵画作品。欠落した身体が示すように絵の中に一種の隙間が設けてあり、観客が自由に物語を紡ぎ出せるようになっている。決して暗くはないが、どこかメランコリックな風合いがあるのもこの人の特徴。現実離れした情景を描いているが、卓越した描写力が絵に説得力を与えている。
2008/12/09(火)(小吹隆文)
アヴァンギャルド・チャイナ─〈中国当代美術〉二十年─
会期:12月9日~3月22日
国立国際美術館[大阪府]
中国の現代アートと言っても、ごく一部、それも書籍などの情報でしか知らなかったので、本展には正直圧倒された。13作家・3グループの50余点には、熱くて、強くて、激しい作品が多い。ギラギラした目で睨みつけられてるような感じ。日本の具体とかネオダダも当時はこんな雰囲気だったのだろうか。そんな中国現代アートも、若手作家になると資本主義的な価値観が浸透し始めているよう。逮捕覚悟で発表していた世代とは隔世の観がある。さしもの中国でも前衛の時代は終わったということか。そうした約20年の歩みを濃縮パックしてくれたので、とても見応えのある展覧会だった。作品のパワーが強いので、元気な時に見ることをおすすめする。
2008/12/08(月)(小吹隆文)