artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
ヤマガミユキヒロ展 SynchroniCity
会期:2009/02/03~2009/02/15
neutron-kyoto[京都府]
左右二つのスクリーンに異なる都市の風景がスロー再生されている。面白いのは、それぞれの風景が左右対称にトリミングされ、一つの景色に見えるように接続されていること。合体された二つの景色は微妙なバランスを保ち、見た事がないのに既視感がある不思議な状態へと見る者を誘う。ヤマガミは一貫して都市をテーマにした作品を作って来たが、本作が醸し出すゆったりしたグルーヴはこれまでになかった快楽的なものだ。
2009/02/03(火)(小吹隆文)
高橋匡太 展“Roomers”
会期:2009/02/01~2009/02/21
MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]
JR京都駅南側へと移転したヴォイス・ギャラリーのオープニング展。十和田市現代美術館の外壁を彩る照明のインスタレーションで知られる高橋匡太が、昨年のソウル・ビエンナーレ出品作をバージョンアップして披露した。作品は6つの映像がシンクロして明滅するもので、一つのテーブルを軸に男女の物語がシルエットで展開される。実はこの男女は別々に撮影されていて、二人の物語というのは見る側の思い込みに過ぎない。説明的要素を極力排することで、コミュニケーションの妙を浮き彫りにした本作。高橋の手腕が鮮やかに示されていた。
2009/02/01(日)(小吹隆文)
田中真吾 個展「夢と現」
会期:2009/02/01~2009/02/28
eN arts[京都府]
パネルに漆喰を塗り込め、その上で紙を燃やしたり、画用紙を何重にも重ね貼りしたパネルをバーナーで焼いて作られる田中真吾の作品。火をモチーフにしたアート作品は数あれど、燃焼という現象自体をダイレクトに表現へと転化しているのが彼ならではの特徴である。焼け焦げた表面が見せる複雑な表情と、圧倒的な存在感が魅力的。今回は、立体、半立体、写真と、作品のバリエーションも豊富で、彼を初めて知る人にも最適の内容だった。
2009/02/01(日)(小吹隆文)
「静物」才木寛之 展
会期:2009/01/26~2009/01/31
番画廊[大阪府]
発泡スチロールの芯に革を張った才木の作品は、身体の一部のような生々しさと、ある種のエロティシズムが特徴だ。しかし、今回発表した新作では、頭蓋骨を思わせるフォルムへと進化が見られた。これは、芯を木で造形したり、一枚の革で全体を覆うなど、制作方法の変更に依るところが大きい。なかでも、表面に現われた複雑な凹凸模様(肉食恐竜の牙を思わせる)は大きな魅力である。
2009/01/26(月)(小吹隆文)
パラモデリック・グラフィティ at なにわ橋駅
会期:2009/01/19~2009/01/24(公開制作)、2009/01/25~2009/03/29(展覧会)
アートエリアB1[大阪府]
京阪電車「なにわ橋駅」の構内にオープンしたパブリックスペースに、パラモデルの巨大なインスタレーションがお目見えした。プラレールを使った作品ということで場所との相性は抜群。駅を利用するサラリーマンやOLなど普段はアートに縁遠そうな観客が多く、特に親子連れの反応が際立っていた。不特定多数の人が訪れるスペースだけに破損が気になるが、それもハプニングとして前向きにとらえるべきだろう。美術館やギャラリーとは明らかに違う、そして商業施設とも異なる性質を持った新スペースのポテンシャルが明らかになった。今後も是非アートプロジェクトを続けてほしい。
2009/01/25(日)(小吹隆文)