artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

モエレ沼公園

モエレ沼公園[北海道]

前回来たとき(真冬)まだ造成中だったモエレ沼に行こうとして吹雪に遭い、危うく遭難しかけた苦い経験がある。そのリベンジに燃える今回は早起きして地下鉄とバスを乗り継ぎ、朝8時半に到着。ちょっと早すぎたみたいで、レンタサイクルも開いておらず、しばらく待つハメに。いざ自転車に乗って出発したが、ほとんど無人でさびしいよお。ぐるっと一周し、モエレ山に登り、遊具を楽しみ、ガラスのピラミッドを堪能する。これは子どもと来たら1日遊べるなあ。ちょっと気になったのは、完成からまだ10年もたってないのにコンクリートの道や階段にひび割れが目立ち、遊具のカラフルな塗装がはがれかけていること。かつてゴミ処理場で、その前は名前のとおり沼地だったはずだから地盤がゆるいのではないかしら。入場無料だからメインテナンスもままならないのかも。よけいなお世話だが。

2011/10/29(土)(村田真)

第26回 国民文化祭・京都2011「COLORS OF SEASONS──大舩真言/高橋治希展」

会期:2011/10/29~2011/11/06

京都芸術センター[京都府]

「国民文化祭・京都2011」にあたって開催された「京の暮らしの文化展──折々のいろどり」の関連企画として同時期に行なわれていた高橋治希と大舩真言の作品展示。同センター南北のギャラリーでそれぞれ9日間展示された。薄い陶器でつくられた沢山の白いパーツが植物の葉のように螺旋を描きながら伸び上がっていくイメージの高橋の立体インスタレーションは、作品に近づくときに思わず息をひそめてしまうほど繊細で危ういバランスに見えた。張りつめるような緊張感と儚い雰囲気がたいへん美しい空間だった。大舩は、ギャラリーの壁一面を使った大作一点を展示。入口の扉を開けるとギャラリー空間は設置された壁で遮られているが、その暗い通路を進むと、奥に一段高い台があり、反対側の壁面に巨大な作品が展示されていた。深い奥ゆきを感じさせる岩絵の具独特の色彩と、壮観な自然の景色を思わせる大画面に目が釘付けになる。小学生が近づいたり離れたり、寝転がったり、いろいろな角度でずっと眺めていたというエピソードを後で聞いたのだが、その場から離れがたくなる魅力的な佇まいの絵画。見る角度や作品との距離、視線の高さ、照明が与える印象の違いなど、さまざまな点が考慮されていたのもよくわかる展示であった。どちらのアーティストの発表も見応えのあるものであったが、それだけにたった9日間の会期だったのがもったいない。
写真キャプション:会場風景

2011/10/29(土)(酒井千穂)

アンリ・サラ

会期:2011/10/14~2011/11/10

KaiKaiKiKiGallery[東京都]

アルバニア生まれのアーティスト、アンリ・サラの個展。スネアドラムをモチーフとした立体作品と、3本の映像作品などが発表された。映像には、ビルの屋上でサックスを吹く黒人男性やさまざまな人たちが手回しのオルガンを弾いていく様子が映し出され、それぞれ無関係に進行していくものの、次第に映像と音楽が共振してゆき、やがて穴の開いたオルガンの楽譜と灯りのついた高層マンションの窓が重なり合うシーンで完全に一致する。音楽と映像の奇跡的な同期。サッカーボールを頭の上に乗せてバランスを取る最後のシーンが象徴していたように、アンリ・サラが見せようとしていたのは、その危うくも魅力的な瞬間なのだろう。

2011/10/28(金)(福住廉)

横浜を撮る!捕る!獲る! 横浜プレビュウ

会期:2011/10/14~2011/11/06

新・港村(新港ピア)[神奈川県]

横浜トリエンナーレにあわせて新港ピアで開催されている「新・港村」。全国各地のアート関係のNPO法人、企業メセナ活動の組織、インディーズスクール、クリエーターたちの常設スタジオなどが、ところ狭しと建ち並び、ひっきりなしにパフォーマンスやダンスの公演、シンポジウムなどが開催されている。7月のスタート時にはまだ閑散とした雰囲気だったのだが、日が経つにつれてだいぶ賑やかになってきた。そのかなり広い会場のあちこちに写真が並んでいる。「新・港村」のクロージング企画として、11人の写真家が横浜を撮り下ろした作品を展示するという「横浜プレビュウ」の企画だ。
参加者は石内都、小山穂太郎、佐藤時啓、鈴木理策、中平卓馬、楢橋朝子、宮本隆司、森日出夫、山崎博、佐久間里美、三本松淳。中平のように「いつもの写真」を展示している者もいれば、三本松のようにスリット状の画像をブラインドのように吊るした新作のインスタレーションを試みる者もいる。佐藤や楢橋や宮本は手慣れた手法で横浜の目に馴染んだスポットを撮影し、鈴木や石内は身辺雑記的な日常のスナップを既成の空間に巧みに配置していた。モザイク状に入り組んだスペースの構造を逆に活かして、作品を会場に溶け込ませつつどう自己主張するのかが腕の見せ所なのだが、全体としてはかなりうまくいっていたのではないだろうか。
なお、有名写真家の顔見世興行的な「横浜プレビュウ」とは別に、東京藝術大学の在校生、卒業生たちの「TEAM それがすき」、BankART School飯沢耕太郎ゼミ有志による「チーム・いまゆら」、若手写真家のエグチマサル、藤本涼、横田大輔、吉田和生が合体した「MP1」など、いくつかの写真家グループが、やはり会場内でゲリラ的な展示を行なっていた。時には「横浜プレビュウ」の展示を食ってしまう作品もあり、カオス的な雰囲気がより強まっていた。

2011/10/28(金)(飯沢耕太郎)

鈴木涼子 個展「Magnolia──マグノリア」

会期:2011/10/01~2011/10/29

CAI02[北海道]

そして札幌なう。札幌を訪れるのはもう10年ぶりくらい。今回は展覧会取材ではなく、芸術の森美術館で開かれる企画展の作品搬入のために来たのだ。その前にまず、事務局の佐野さんの案内でCAIのギャラリーへ。鈴木涼子といえば、フィギュアの身体に人の首(本人の顔)をつなげた画像で知られるアーティストだが、今回は顔も体も生まれたままの生身の人間。一瞬セルフヌードに走ったかと思ったが、やけに筋肉質で毛深くてチンチンまで生えてる画像もあって、首から下は男と判明。そうきたか。次は人魚かケンタウロスか。

2011/10/28(金)(村田真)