artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
第13回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展(2012)記者発表/新・港村 スーパースクール「伊東建築塾レクチャー」

会期:2011/10/31
国際交流基金/新・港村スクール校舎[東京都/神奈川県]
国際交流基金にて、ヴェネチア・ビエンナーレ建築展2012の日本館コミッショナーに伊東豊雄が選ばれたことについて記者会見が行なわれた。メインの展示は、子どもから寄せられたみんなの家のドローイングのほか、藤本壮介、平田晃久、乾久美子とともに共同設計を行なう、みんなの家である。畠山直哉が撮影した故郷の陸前高田の写真を導入部に使うが、それ以上にまだ喪の感情から抜けることができない彼が半ば地元民として、また棘としてプロジェクトに介入するというのが興味深い。同日の夜、新・港村にて、伊東塾の5カ月の活動を報告するイベントにも立ち会った。建築家養成講座もあるが、子どもを対象とした教育について、驚くほど結果が充実し、空間や場所の想像が豊かだったという。ビエンナーレの伊東の展示におけるみんなの家(建築家以外によるドローイング)への重視と確実にリンクしている。
2011/10/31(月)(五十嵐太郎)
プレビュー:龍野アートプロジェクト2011「刻の記憶」

会期:2011/11/18~2011/11/26
うすくち龍野醤油資料館周辺の醤油蔵、龍野城、聚遠亭(藩主の上屋敷)[兵庫県]
「小京都」とも称されるとおり、タイムマシーンに乗って過去に戻ったかのような古い街並みが眼前に広がる城下町「龍野」(兵庫県たつの市)。童謡「赤とんぼ」の作詞者、三木露風を初め、数々の文化人が輩出した地としても名高い。今回、同地で初めて開催される現代美術展「龍野アートプロジェクト2011『刻の記憶』」は、いわゆるオフ・ミュージアム型の芸術祭で、再生された古い醤油蔵や龍野城(本丸御殿)、聚遠亭(藩主の上屋敷)で美術家によるインスタレーションが行なわれる。近年、地域の活性化を目的とした芸術祭の開催が盛んだが、今回の龍野アートプロジェクトに特徴的なのは、運営スタッフのみならず出品作家もこの地域在住、出身の人々等で構成されている点だ。それだけに、「刻の記憶(トキノキオク)Arts and Memories」という展覧会テーマが大きな意味を持つインスタレーションとなることが期待される。出品作家は、尹熙倉(ユン・ヒチャン)、東影智裕、小谷真輔、佐藤文香、芝田知佳、ルーアン美術学校卒業生(モーガン・アレ、カウータ・ベクレンシ、エミリ・デュセール、レミ・ジャノ、井上いくみ)。11月13日(日)にはプレ・イヴェントとしてルーアン美術学校卒業生による醤油蔵での公開制作がある。会期中はアーティスト・トーク、子どもを対象としたワークショップ、作品ガイドツアーなど多数のイヴェントが行なわれる。詳細は、公式ウェブサイト参照。[橋本啓子]

左上=尹煕倉(ユン・ヒチャン)《何か》2009、陶粉、膠、80×110×4cm
左下=尹煕倉(ユン・ヒチャン)「四角の話」、2011年個展、かみ添え(京都)での展示風景
右=東影智裕《rabbit (s-005)》2011、エポキシ(着彩アクリル絵具)、16×13×19cm
2011/10/31(月)(SYNK)
日常/ワケあり

会期:2011/10/18~2011/11/19
神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]
ニューヨークを拠点に活動する江口悟、田口一枝、播磨みどりによるグループ展。いずれもインスタレーションで、日常品を紙で構成したり(江口)、構築物にプロジェクターで映像を重ね合わせたり(播磨)、ある種の日常性を共通分母としているようだ。なかでも、圧倒的な展示を見せたのが、田口一枝。同ギャラリーの最も大きな空間に、光沢のあるシルバー・フィルムを連ねたラインを天上から何本も吊り下げ、LEDライトによって反射した光の輪が幾重にも重なり合いながら揺れ動く光景をつくり出した。暗闇の中でゆっくりと回転する冷たい光輪に包まれる経験が、静かな感動を呼ぶ。
2011/10/30(日)(福住廉)
神戸ビエンナーレ2011

会期:2011/10/01~2011/11/23
神戸ハーバーランド、ポーアイしおさい公園、[兵庫県]
第3回の神戸ビエンナーレをまわる。テーマは「きらkira」。まちなかの高架下や兵庫県立美術館のパートは楽しめたが、肝心のメイン会場である神戸ハーバーランドやポーアイしおさい公園は内容がちょっと混乱気味だった。いい作品があっても、これだと埋もれてしまうだろう。今回、東日本大震災の影響でコンテナそのものを使えなかったのも痛い。兵庫県美における渾身の「榎忠」展一発の方が神戸ビエンナーレ全体よりも心に残る。
2011/10/30(日)(五十嵐太郎)
国谷隆志 展「Mars」

会期:2011/10/18~2011/11/06
Gallery PARC(グランマーブル ギャラリー・パルク)[京都府]
国谷隆志はネオン管のインスタレーション作品をこれまでも度々発表してきた。色鮮やかな光彩や、光が安定した状態で維持されているそのインパクトはかなり強い。それだけにこのシリーズを展開し続けることはチャレンジングでもあると思うのだが、その都度、まるで各会場の特性に呼応するように印象が異なって見えるのが興味深い。今回の会場は商業施設が建ち並び、人通りも多い、三条通に面した建物の二階のギャラリー。約30本の赤い光のネオン管がランダムに配置された空間は、床にも、透明ガラスの壁面にもそれらの光が反射していた。訪れたのは昼間だったのだが、沢山の人が歩いている外の繁華街も見下ろせるなかで、まるで宙に浮いているような不思議な感覚も覚える。暗くなってからもう一度行く予定だったのだが叶わず残念。きっとガラスの壁面に写り込む光景も美しく、また昼間とは異なる魅力が味わえたに違いない。
写真キャプション:会場風景
2011/10/30(日)(酒井千穂)


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