2019年09月01日号
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artscapeレビュー

島袋道浩「美術の星の人へ」

2009年02月01日号

会期:2008/12/12~2009/03/15

ワタリウム美術館[東京]

「やるつもりのなかったことをやってみる」の文字が大きく白い壁に描かれてあって、それは、観客への作品案内のようで実は指令(インストラクション)。NYのビルボードに「WAR IS OVER」と掲げたオノ・ヨーコに似ているなと思う。ただし、島袋が観客に告げるのは、イマジンというより実感してみよ。例えば、上記した文字の下にはゴルフのできる囲いがあって、実際にスイングしてみよ、というのだ。美術館にないはずのゴルフ場で、思いもかけずスイングする経験。島袋は、観客に実行を誘い、自分もそれを実践する。イタリアでタコ壺を制作して現地の海で漁に挑み、また別の浜辺で自分を描いた等身大の凧を上空に揚げてみる。ほかにも、床に置いた箱がないはずの口でしゃべり出すとか、非常階段をめぐると象の背中を写した写真が見えて、さらに上ると不意に青山で象の鳴き声が響くとかがあった。本展覧会のために制作された写真集『象のいる星』は300円、普段は路上で『ビッグイシュー』を売るおじさんが美術館の出口で販売していた。話すはずのないおじさんと話し、買うはずのない『ビッグイシュー』も購入。今日の作家の大事な仕事は、こうしたちょっとした入れ替えの仕掛けをつくることにある?なんて思いながらぼくは帰りの電車で、象のいない青山の風景写真に象の存在を実感しようと写真集を繰った。
島袋道浩「美術の星の人へ」:http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html

2009/01/25(日)(木村覚)

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