artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

益村千鶴「Esperanza」

会期:12月9日~12月28日

neutron[京都府]

あいにく私は見逃したけれど、2005年の大阪のベルギーフランドル交流センターでの展示が出会いのきっかけとなり、京都では初めてのこの発表に至ったのだと聞いた。作品を見るのは今回が初めてだが、どこかで手に取ったそのときのDMがとても印象に残っていて、会場で過去の作品ファイルを見ていてすぐにその記憶がつながった。3年も前の、しかも見ていない展覧会のDMなんてほとんどは覚えていないものだが、それだけ益村の作品は強いのだと思う。さらっと軽いタッチの作品や、脆弱でふわふわと浮遊するような薄いイメージの、最近よく見かける絵画とは完全に一線を画している。画面に深く堆積する色の重厚感と、時間が止まったような静謐な雰囲気は、観る側との空気を分ける固い印象で緊張感が漂っている。しかし、同時にモチーフの滑らかな質感や輪郭、鈍い色彩の世界が美しく、全体的にどの作品も、明け方や夕暮れ時の空の色がゆっくりと移り変わっていくさまのように視線を惹きつける。神々しいという言葉も浮かんでくる圧倒的な魅力があった。

2008/12/21(日)(酒井千穂)

本郷仁 展

会期:11月29日~12月27日

CAS[大阪府]

会場には3点の作品。ミラーボールのように吊るされたオブジェは凹面と凸面に六角形の鏡を敷き詰めたもの。壁面の作品は三角形の鏡をピラミッド状(四角錐)に配して規則正しく並べられている。もう1点は映像で、観客の姿がランダムに9分割されて映し出される。鏡の作品の前に立つと、自分の姿が千変万化に写り込み、ちょっとした異次元感覚。光学的現象にすぎないと言われればそれまでだが、思わぬ自分の姿を見せられたようでドキッとさせられる。

2008/12/18(木)(小吹隆文)

高橋耕平 個展 Take-A little action and small accident

会期:12月10日~12月21日

GALLERY RAKU[京都府]

薄型モニターに映し出された映像は、一見スチール写真のよう。しかし、じっと見続けていると、時折人物が動いたり、画面が微妙に手ぶれしていることに気付く。既成イメージに小さな仕掛けを施すことで、見る者の常識を編集し直すということか。でも、一旦気付くと、今度はそれ自体が既成イメージになってしまう。そこまで読み込むのが高橋の意図だと思われるが、いわゆる脳トレ的なサプライズで止まってしまう可能性も高い。かといってハードルを下げれば陳腐になるし。さじ加減が難しいところだ。

2008/12/16(火)(小吹隆文)

三瀬夏之介 展

会期:12月13日~12月27日

イムラアートギャラリー[京都府]

1月に東京の佐藤美術館で個展を行う三瀬が直前に京都で新作展を開催。まさかウォーミングアップでもなかろうが、多作の人らしいバイタリティが感じられる。新作は、無数のイメージが時空や遠近を超えて交錯する彼特有の画風は相変わらずだが、複数のピースを繋ぎ合わせる手法は用いられなかった(一部コラージュはあり)。インクジェットプリントによる写真画像が頻繁に用いられていたのも目新しい。また、屏風仕立てや、額装された大作があったのも新趣向だ。彼はまた新たな領域に向かおうとしているのか。

2008/12/16(火)(小吹隆文)

室井公美子 展

会期:12月2日~12月20日

ギャラリーMoMo[東京都]

絵具をぶちまけたり擦ったりした偶然性の高い絵画だが、いくつかの作品には歪んだダイヤモンドのような五角形が見られ、よく見ると、それ以外にも不定形ながら似たような形態が散見できる。岡崎乾二郎みたいな転写かと思ったら、デューラーの《メランコリア》からの翻案なのだそうだ。ほかにも彗星が見えていたり、具体的モチーフをよりどころにしていることがわかる。

2008/12/16(火)(村田真)