artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
未来を担う美術家たちDOMANI・明日展2008

会期:12月13日~1月26日
国立新美術館[東京都]
いきなり日展の工芸部門みたいな染織作品が並んでいて、会場を間違えたかと思う。その次が田中信太郎というチグハグさ。出品作家15人のうち7人は1990年までに文化庁から海外に派遣された人たち、8人は2002年以降の派遣組だそうだ。2005年派遣の開発好明が、1994年1月1日から毎朝自分の顔を撮り続けているセルフポートレートは圧巻。その5000枚余りを7分に圧縮した映像を見ていると、これを始めるきっかけとなった友人の「お前老けたな」という言葉が実感をもって迫ってくる。カタログ所収の開発の顔写真も思いっきり笑える。こういうやつを海外に出していいのか。
2008/12/16(火)(村田真)
シガリット・ランダウ

会期:11月1日~12月14日
広島市現代美術館[広島県]
Chim↑Pomの個展がポシャって扉を閉じたスタジオの前で、シガリット・ランダウの映像を流している。シガリット・ランダウといえば、10年ほど前のドクメンタで、観客をいつのまにかクソだめに導き入れる快心のインスタレーションを見せてくれたアーティスト。それだけに、砂浜でふたりの女性が意味ありげな行為を繰り返すだけの思わせぶりな映像にはイラ立つ。
2008/12/14(日)(村田真)
第7回ヒロシマ賞受賞記念:蔡國強展

会期:10月25日~1月12日
広島市現代美術館[広島県]
琴平から特急で瀬戸大橋を渡って岡山に出て、新幹線に乗り換えて広島へ。約2時間の旅。蔡さんの展覧会は受賞記念展なので、前々から準備を進めていたものではなさそうだから、正直あまり期待してなかった。だいいちグッゲンハイム美術館で大回顧展をやったばっかりだし。みたいな心構えで見ると上出来だと思う。これまでの火薬を使ったドローイングや、花火パフォーマンスの記録映像(これだけでも見飽きない)のほか、メトロポリタン美術館のためにつくった巨大なレリーフ《不透明モニュメント》、いわきで見つけた木造の廃船をリサイクルした《無人の花園》と続き、圧巻は、半円形の展示室の壁面45メートルに火薬ドローイングを貼り、床に60トンもの水を満たしたプールをしつらえた《無人の自然》だ。点数はすくないけれど見ごたえある。
2008/12/14(日)(村田真)
金刀比羅宮の屏風展

会期:4月19日~12/末
金刀比羅宮表書院[香川県]
応挙も若冲も由一もパリに巡業中なので、蔵出し屏風の展示を見る。表書院では、ふだんは外側の廊下から内部の障壁画を見る構図らしいが、いまは襖がごっそり貸し出されているので、内部の畳の上を歩いて屏風絵を鑑賞できる。驚くべきは邨田丹陵の《富士巻狩図》。これは屏風ではなく襖絵で、富士の裾野を駆け巡る武士たちが描かれているのだが、その襖を開けると奥の床の間に描かれた雄大な富士の図が現われるという仕掛け。日本美術には意外とこういうパフォーマンスをともなう鑑賞法があってあなどれない。
2008/12/14(日)(村田真)
琴平プロジェクトこんぴらアート2008・虎丸社中

会期:12月12日~12月14日
老舗旅館「虎丸旅館」及び木造和風建築「琴平公会堂」[香川県]
美術家の彦坂尚嘉が金比羅で旅館を使ったアートイベントに参加するというので、そのトークに出席した。金比羅の上のほうでは鈴木了二の建築や、田窪恭治の襖絵があるなどハイ・アート的であるのに対し、今回は下のほうで違うかたちのイベントをやるという。ギャラリー・アルテという四国のギャラリーの女性ギャラリストが企画し、とら丸という旅館の各部屋に展示。宿泊施設をアートの展示に使うのは、東京のアグネスホテル、大阪の堂島ホテルなどでもあり、ベッドや浴室にアートがあったり、少しずつ間取りの違う同じフロアの部屋をすべて見たりする機会は、修学旅行でもないとできない体験。単純にアートがどうこういうより経験として面白い。 今回はその旅館版。木造和風の旅館で、日本の旅館に典型的な、でたらめな増改築がされたプラン。例えば2階に上がるのに四カ所くらい変なところに階段がついている。作家のなかにはその特性をうまく使う人と使わない人がいて、彦坂さんは結構うまく使っていた。二つの会場での展示があり、客室では天井にナスやトマトのオブジェ。彼の初期の作品はフロアー・イベントという床の作品だっただけに、面白い展開。他の作家と違い、床を占有しておらず、そういう意味だと興行的にもあり得る。もうひとつ公会堂でやっていたのは、皇居美術館空想の展開。ちょっとした体育館くらいの広さの空間の真ん中に、存在感のある皇居美術館の模型が置かれる。またその延長である帝国美術館空想も一部紹介。隣に糸崎公朗のフォトモの作品があり、壮大でグローバルな展開の彦坂さんと、ミクロな観察眼で虫や町並みの観察を行なう糸崎さんの展示が対照的だった。
2008/12/14(日)(五十嵐太郎)


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