artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ダブル・クロノス展

会期:11月15日~11月24日

瑞聖寺アートプロジェクトZAP[東京都]

毎年恒例となった多摩美の長谷川祐子ゼミによる企画展。白金台の瑞聖寺を舞台に東恩納裕一、大巻伸嗣、高木正勝、水木塁、大西麻貴+百田有希による作品を展示した。圧倒的だったのは、高木正勝。ブラックキューブのなかで魅せた映像は、従来の牧歌的なイメージを完全に覆し、ダイナミックなリズムで生命の輪廻をたどるようなものだった。

2008/11/22(土)(福住廉)

沖縄・プリズム 1872─2008

会期:10月31日~12月21日

東京国立近代美術館[東京都]

沖縄は好きな場所で、何度も訪れている。行くたびに不思議な気持ちになるのは、異文化の香りを色濃く漂わせながら、どこか懐かしい故郷に帰ったような気持ちにさせてくれることだ。沖縄の言葉(ウチナーグチ)は日本の平安時代くらいの古語の骨格を留めているという話を聞いたことがある。日本の文化、宗教などの原型がそこにあるといえるだろう。それに加えて中国との交易や第二次世界大戦後のアメリカ統治の影響によって、沖縄は一筋縄ではいかない、プリズムのように乱反射する混合文化を育てあげてきた。
「沖縄・プリズム 1872─2008」展は、そんな沖縄を舞台にした近代以後の表現を、絵画、版画、工芸、写真、映画などさまざまな角度から再構築しようという意欲的な試みである。その風土と歴史(とりわけ戦争の傷跡)に根ざしたユニークな視点が浮かびあがってくるとともに、沖縄に魅せられた「本土」出身の作家の作品を含むことで、緊張感を孕んだスリリングな表現の磁場が姿をあらわしていた。
とりわけ興味深いのは、そのなかで写真家たちの仕事が重要な役割を果たしてきたことである。木村伊兵衛の「那覇の市場」(1936)のシリーズから始まって、岡本太郎、東松照明、平良孝七、平敷兼七、石川真生、伊志嶺隆、比嘉康雄、比嘉豊光、掛川源一郎、圓井義典らの力作が並ぶ。沖縄の磁場が写真家たちに大きな刺激を与え、おおらかな生命力がみなぎる作品が次々に生み出されてきたことがよくわかる好企画だった。

2008/11/08(土)(飯沢耕太郎)

津田直「SMOKE LINE──風の河を辿って」

会期:10月28日~12月21日

資生堂ギャラリー[東京都]

津田直の仕事に注目したのは、彼の2冊目の作品集『漕』(主水書房、2007)を見てからである。「丸子船」と呼ばれる琵琶湖を行き来していた幻の舟を、言葉と映像によってさまざまな角度から追い求めていくこの作品集は、思考を形にしていく彼の能力の高さと、写真を使いながら写真を超えていこうとする意欲を見事に表現し切っていた。そして今回、彼の新しいシリーズ「SMOKE LINE──風の河を辿って」の展示と作品集の刊行(赤々舎)によって、津田はわれわれの前に無限の可能性を秘めた新しい才能の出現をはっきりと示してくれたと思う。
資生堂ギャラリーに展示された写真群は、中国の黄山、モロッコの山間の村シケール、そしてモンゴル北部のツァーガン・ノールの3カ所で撮影されている。この地理的にも文化的にもかけ離れた3つの場所を繋いでいるものこそ「風の河」。大気の流れが澱みや結節点を作り出す、そのようなキーポイントを津田は五感を最大限に開放して選びとり、撮影した。とはいえ、彼は単純に風に揺れている草を写しとるようなことはしていない。「風の河」の行方は、そののびやかに広がる風景のイメージそのものから、われわれも心を大きく開いて察知していかなければならない。2枚の写真をセットにして横に繋いでいく、その流れを辿っていくうちに、まさに風にさらわれて空をゆくような、風景の中に体の細胞が解きほぐされて溶け込んでいくような、とても気持ちのいいトリップ状態が訪れてくる。
写真を魔術的な道具として鍛え直し、再構築していこうとする21世紀のシャーマニズム。だが宗教的な堅苦しさや強制力は微塵もなく、そこにはポジティブな自発性と、内から湧き出てくるような創造の歓びが息づいている。

2008/11/07(金)(飯沢耕太郎)

井坂幸恵/bews《kamizono place》

[東京都]

鉄骨が組み上がったころに訪れる。門型フレームで、各層を吊る。最高高さ10mの中に地下1階を含め5層と高密だが、リブ柱が外部にあるため内部の狭小さを感じにくい。特に1階と地下1階では、丸鋼φ9によるメッシュ壁を耐力壁とし、光と風と視線がうまく取り入れられていた。

2008/08/30(土)(松田達)

pippi 個展「paper piecing」

会期:2011/04/20~2011/05/01

Sewing Gallery[大阪府]

草花と木が生い茂る敷地にある古い洋裁学校の校舎にあるギャラリー。はじめに絵や模様を描き、くりぬいた「型紙」でパッチワークをつくることをpaper piecingというのだそうだが、会場には平面作品のほか、キルト用の大きな刺繍枠と布をつなげたものに幾何学的な図形や3人の女の子のイメージを描いた、一連のつながりを想像させる作品が展示されていた。なかでもとても気に入ったのが《阿字子は毎日本を読む》という絵画。野溝七生子の『山梔(くちなし)』という小説に登場する少女がモチーフになっているそうなのだが、偶然にも会場の外にもクチナシの木があって驚いたというエピソードも聞いたせいかよけいに印象に残った。まるで絵本にでも登場しそうなその個性的な空間の雰囲気にもよく似合っていた。


paper piecing展、会場風景

20011/04/29(金)(酒井千穂)