artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
川上勉「死と変容」
会期:2015/06/15~2015/06/27
ヴァニラ画廊[東京都]
乾漆による少女の彫刻。といっても表皮は黒ずんでるうえ、肋骨が浮き上がり、棺桶みたいな箱に入ってるものもあれば、内臓がなくて上半身と下半身が脊椎だけでつながってるものもある。いずれも「スリーピングビューティー」な少女たちだ。
2015/06/26(金)(村田真)
Kamerian.展 Fugly land
会期:2015/06/22~2015/06/27
ヴァニラ画廊[東京都]
タイトルの「fugly」とは「ふぐり」をアルファベット化したシャレだと思ったら、実際に英語として通用していて「fucking ugly」つまり「超醜い」という意味らしい。作品は、アメリカンコミックっぽいくっきりした輪郭線とケバい色彩の暑苦しい少女画だが、ヴァニラ画廊だもん明るいわけがなく、性と暴力がテーマ。「肉欲と暴力が支配し/汚濁の溜まりに雷鳴が轟く(…中略…)ようこそ、ここは愉快なFuglyland」なるコメントが寄せられていた。
2015/06/26(金)(村田真)
京都国立博物館 深緑の記者発表会 in TOKYO 特別展「琳派──京を彩る」
会期:2015/06/26
カフェコムサ銀座[東京都]
この秋、10月10日から京博で始まる「琳派──京を彩る」の記者発表会。京博は昨年、新館が完成してから大きな特別展ごとに東京で記者発表会を開くようになったが、さすが関西、学者も笑いのツボを押さえてるし、気前よくお土産もくれる。今回は終了後にスイーツがふるまわれ、また京博のオフィシャル・キャラクターとして、尾形光琳の《竹に虎図》をフィギュア化した「虎形琳ノ丞(通称トラりん)」もプレゼントしてくれた。めでたしめでたし。ではなくて、「琳派展」。見どころはかの有名な《風神雷神図屏風》で、俵屋宗達(国宝)、尾形光琳(重文)、酒井抱一の世代を超えて描き継がれた3点が一堂に会するという。
2015/06/26(金)(村田真)
線を聴く
会期:2015/04/24~2015/07/05
メゾンエルメス・フォーラム[東京都]
エルメス財団が特別共催している森美術館の「シンプルなかたち展」に呼応する企画。こちらもカールステン・ニコライ、ニエーレ・トローニ、高田安規子・政子らの現代美術から、ロジェ・カイヨワの「石の絵」のコレクションまで幅広い。この「石」が自然に生成する図像には若いころハマったなあ。奥の展示室にはシュウ・ビンの山水画みたいな絵があるが、裏に回ると枯れ葉やガラクタなどで構成されてるという罰当たりな秀作だ。その奥には懐かしい、鯨津朝子のウォールドローイングも。
2015/06/26(金)(村田真)
金村修「System Crash for Hi-Fi」
会期:2015/06/23~2015/07/04
The White[東京都]
金村修の新作は、あいかわらずのクラッシュした都市光景のモノクロームプリントによる再構築だが、いい意味での開き直りが感じられて、楽しんで展示を見ることができた。
壁に5枚×6段、6枚×7段、8枚×7段で(他にフレーム入りの写真が1枚)、びっしりとモザイク状に貼られたプリントには、暗室作業中のアクシデントの痕がちらばっている。現像液や定着液のムラ、染み、光線漏れなどが原因と思われるこれらの傷跡が、半ば意図的に作られたものであるのは明らかだろう。つまり、被写体となる都市の物質性が、暗室作業を通過することで、印画紙の物質性に置き換えられているわけであり、その手続きは職人技といえそうな巧緻さに到達している。ノイズの取り込み方、活かし方が、視覚的なエンターテインメントとして充分に楽しめるのだ。
それにしても、昨今の若い写真家たちの、デジタル化した都市の表層を「つるつる、ピカピカ」に撮影した写真群と比較すると、金村の展示のあり方はもはやクラシックに見えてくる。だが、それを否定的に捉える必要はないと思う。プリントのそこここから、血液ならぬ現像液が滲み出てくるような金村の写真には、「TOKYO2020」に向かって画一化、パッケージ化を加速させつつある都市の状況に対して、全身で抗う身振りが刻みつけられているからだ。なお、ギャラリーの奥の小部屋では、カラー写真のプロジェクションと動画作品の上映がおこなわれていた。こちらはまだ試作の段階で、発表のスタイルが定まっていない印象だった。
2015/06/25(木)(飯沢耕太郎)