artscapeレビュー

原研哉『日本のデザイン──美意識がつくる未来』

2012年03月01日号

著者:原研哉
発行日:2011年11月
発行所:岩波書店
定価:840円(税込)
サイズ:新書、256頁

とにかく読んでいて「はっ」とさせられることの多い本である。デザイナーとして活躍し、近年とりわけ、海外で日本のデザインを紹介する展覧会の仕事を手掛ける著者が、日本のデザインの原点と未来とを照射する。外から見た日本のデザインのありようを示したうえで、日本固有の美意識・価値観を明らかにし、これからの日本のものづくりにそれらがどう生かされるべきかについて問題提起する。グローバル化する社会、また活性化するアジア全体のなかで、日本──低成長時代と東日本大震災を経験し、社会の大きな転換期を迎えつつある──のデザインには、どのような可能性があるのか。その問いに応えるべく、六つの章が用意される。1)移動:デザインのプラットフォーム、2)シンプルとエンプティ:美意識の系譜、3)家:住の洗練、4)観光:文化の遺伝子、5)未来素材:「こと」のデザインとして、6)成長点:未来社会のデザイン。本書は、我が国がデザイン立国としてしなやかに生きるすべを提示するだけでなく、「デザイン」が本質的に未来を志向するものだということを教えてくれる。[竹内有子]

2012/02/19(日)(SYNK)

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