artscapeレビュー
コレクション展──われらの狂気を生き延びる道を教えよ
2015年09月15日号
会期:2015/07/25~2015/10/18
広島市現代美術館[広島県]
核関連の作品を公開する被爆地ヒロシマならではのコレクション展。本田克己《黒い雨》とか細江英公「死の灰」シリーズなど、直接ヒロシマの災禍を表わした作品もあれば、イヴ・クライン《人体測定170》とか高松次郎《影の母子像》など、なぜヒロシマと関係があるのか一見わかりにくい作品もある。おもしろいのは後者のほうで、いってしまえば解釈次第ということでもある。たとえばヘンリー・ムーアの彫刻《アトム・ピース》は、ヒロシマでは反核のモニュメントとされているのに、同じ形状の《ニュークリア・エナジー》が置かれたシカゴでは、核エネルギー開発の成功を記念するモニュメントになっているという。同じ作品がまったく正反対の意味を担わされることもあるのだ。これこそ芸術の恐ろしいところであり、またおもしろいところでもあるだろう。同じようなことは戦争画(なかでも藤田嗣治の《アッツ島玉砕》)にもいえることで、そうした多義的な解釈が可能な作品こそ傑作と呼ぶべきかもしれない。
2015/08/21(金)(村田真)