2018年04月15日号
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artscapeレビュー

1945年±5年 激動と復興の時代 時代を生きぬいた作品

2016年07月01日号

会期:2016/05/21~2016/07/03

兵庫県立美術館[兵庫県]

最近の芸能人の不倫騒動や、東京都知事の辞任問題を見て感じるのは、とにかく白黒をはっきりつけたがる、相手に少しでも落ち度があれば徹底的に叩いても構わないという、硬直した風潮である。現実はもっと複雑で、世の中の事象の多くはグレーのグラデーションではないかと思うのだが(悪質な犯罪は除く)。それは過去を振り返る場合も同様で、ステレオタイプな印象で判断すると、本質を見失いかねない。1940年~50年の日本の美術をテーマにした本展を見て感じたのはそういうことだ。例えば、太平洋戦争初期の1942年には、まだお洒落な洋装の女性を描いた油彩画が発表されていた。戦後に国家を断罪する作品を描いた美術家が、戦中は大東亜共栄圏を賛美する作品を手掛けていた。戦争画を描いた画家のなかには、満州のロシア人地区など海外の珍しい風景をスケッチしたいがために従軍した者が少なからずいた。それは研究者にとっては既知の事実かもしれないが、少なくとも筆者には初耳の新事実であった。もちろん当時は国家総動員体制で、思想統制・報道統制が敷かれており、戦況の悪化とともに国民は耐乏生活を強いられ、戦地・銃後を問わず多くの人が亡くなった。それは紛れもない事実だが、一方で別の事実があることも知っておかなければ、人は知らず知らずのうちに偏見に絡め取られてしまうだろう。近代日本史上最大の激動期を、白か黒かではなくグラデーションとして提示した点に本展の価値はある。

2016/05/21(土)(小吹隆文)

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