2018年10月15日号
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artscapeレビュー

Volez, Voguez, Voyagez Louis Vuitton 空へ、海へ、彼方へ ─ 旅するルイ・ヴィトン展

2016年07月01日号

会期:2016/04/23~2016/06/19

「旅するルイ・ヴィトン展」特設会場[東京都]

ルイ・ヴィトン展特設会場[東京都]


「旅」をテーマにルイ・ヴィトンの歴史をたどる世界巡回展の日本展。三菱一号館美術館の「PARIS オートクチュール展」でも監修を務めたガリエラ宮パリ市立モード美術館館長オリヴィエ・サイヤールが監修し、演出家のロバート・カーセンが会場を構成。会場は東京・紀尾井町に仮設された建物。外観はいかにも仮設の建物なのだが、中に入るとコーナー毎にそれぞれ趣向が凝らされた驚くほどラグジュアリーな空間が連続する。たとえば創業の原点を扱ったコーナーでは、部屋の中央に木製トランク制作のための古い木工工具、周囲には工房の写真、商標のスケッチなどの資料がならび、部屋全体は上質な木のパネルの内装。船の旅のコーナーは船の甲板、自動車の旅のコーナーは木立の中の道、空の旅では雲の上、列車の旅は一等客車のイメージというぐあいだ。全体はルイ・ヴィトンとその製品の歴史がクロノロジカルに構成され、合間合間にコラム的にトランクのヴァリエーション、オートクチュール製品、セレブリティたちの特注品、アーティストとのコラボレーション作品、ガストン-ルイ・ヴィトンのバッグ・コレクションなどが挿入される。展覧会として優れていると感じたのは、自社製品を並べるだけではなく、同時代のファッションやアートを合わせて展示することで、単なるハイブランドの一企業史展ではなく、ラグジュアリーファッション史、上流階級の生活文化史の展覧会としても見ることができる点だ。たとえば自動車の旅のコーナーには20世紀初頭にラルティーグが撮影した自動車ドライバーたちの写真が展示されおり、その手前に革製のゴーグルや自動車用トランク、工具入れなどが並ぶ(ラルティーグの写真をこのように見せることができるのかと感心した)。歴史的なドレスはガリエラ宮パリ市立モード美術館のコレクション。まるで部屋の装飾品のようにさりげなくクールベ《オルナン近くの風景》が壁に掛かっている。ルイ・ヴィトンの製品がどのような人々にどのようなシチュエーションで用いられていたか、当時の人々にとって何が新しかったのかが伝わる展示構成なのだ。逆に言えば、歴史の重みを背景に新しさを演出することこそがハイブランドをハイブランドたらしめていることを痛感させられた展覧会だった。贅を極めたこの展示が入場無料、撮影自由というところも驚き。日本のブランド企業にとっても、この展示とその背後にあるLVMHグループの戦略には学ぶところが多くある。[新川徳彦]

2016/06/14(火)(SYNK)

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