2018年10月15日号
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artscapeレビュー

イングリッシュ・ガーデン ─英国に集う花々─

2016年07月01日号

会期:2016/04/29~2016/06/26

京都文化博物館[京都府]

産業革命以降、英国人にとって、「都市」と「田園」は常に重要な対概念となってきた。緑なす地方のカントリー・ハウスで貴族階級によって展開されてきた広大な庭園は、近代化に伴い、規模と形式を変えて一般市民にも広まっていく。英国人の園芸・自然愛好は、同国が最初の工業国家であることと切り離せない。むろん大英帝国の拡大と轍を同じくして、海外植民地から植物を輸入したプラント・ハンター達の活躍と近代植物学の発展も見逃すことができない。本展は、キュー王立植物園の所蔵する植物画をメインに、自然に魅せられ植物をデザインに取り入れた近代デザイナーの作品群を加え、およそ180点を展示するもの。ロンドンのキュー・ガーデンに行った人が必ず訪れるのが、19世紀半ばに建てられたパーム・ハウス(ヤシ類の大温室)だろう。植物が生育する熱帯の気候を再現した同室は、ガラスと鉄でできた近代的建造物。世界で最も早いプレハブ建築として知られる、1851年ロンドン万博の水晶宮は、造園家であったジョセフ・パクストンが温室を参考にして設計した。興味深いことにパクストンは、出展された植物画の通り、オオオニバスの葉の曲線構造に着想を得て設計を行なったという。かように、19世紀の近代技術と植物学の繋がりは深いのだが、デザインも密接にそれと関係している。そもそもボタニカル・アートとは、「科学的な植物画」であり、植物学の分析的な観点から正確に描写されたもの。本展で展示されたクリストファー・ドレッサーのデザイン製品は、彼の経歴が植物学者であったことからもわかるように、植物の形態を分析的に捉えて抽象し、装飾に相応しいように模様化している。ウィリアム・モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動のデザイナーたちが表象する自然は、それとは異なる性質を持っている。描かれた多種の花々を愛でるだけでなく、近代英国の文化的諸相についても思いを巡らすことできる展覧会。[竹内有子]

2016/06/08(水)(SYNK)

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