2018年04月15日号
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artscapeレビュー

中銀カプセルタワービル

2017年09月01日号

[東京都]

建築・アートの研究者である和田菜穂子さんの案内で、銀座の中銀カプセルタワービルを見学。黒川紀章の設計により1972年に建てられた13階建ての集合住宅で、カプセルを積み上げたユニークな姿は、新陳代謝していく建築・都市を提唱したメタボリズム運動を代表するものとして知られている。「中銀」というのはてっきり中央銀行とかが施主だったから名づけられたんじゃないかと思っていたが、単に中央区銀座にあるからだって初めて知った。丸窓のある直方体のカプセルが積み重なり、外から見ると巨大な鳥の巣か、コインランドリーの洗濯機を縦に並べたよう。個々のカプセルは独立した部屋になっていて、構造的に交換可能なはずだったが、両隣にビルが建ってしまったこともあって一度も交換されたことはないそうだ。
さっそくエレベーターで上階へ。通路や継ぎ目は老朽化が激しいが、部屋のなかに入ると約半世紀前の「未来」が保存されている。室内はオフホワイトで、直線と円で構成されているところがいかにもレトロフューチャーな趣。そう、これが40-50年前の「未来」だった。大阪万博にもこんな未来的なパビリオンが林立してたっけ。独身者用なので1室の広さはビジネスホテルより狭い3畳程度か、でもその後できたカプセルホテルよりずっと広い。ちなみに最初のカプセルホテルを設計したのは黒川紀章とのこと。ユニットバスはついているけどお湯は出ないらしい。ベッドやテーブルは収納式で、テレビや冷蔵庫は備え付け。部屋によってはあれこれ改装しているという。
こういう未来志向の建築は年月を経てほころびが出てくると、見るも無惨な姿をさらすことになる。最新の機器やデザインほど10年もたてば逆に古さが目立つようになるからだ。レトロフューチャーな建築にも二つあって、ひとつは1968年に公開された映画『2001年宇宙の旅』に見られるような、無菌室のごときウルトラモダンなインテリアであり、理想的かつ非現実的な未来像だ。もうひとつは1982年に公開の『ブレードランナー』に代表される薄汚くて猥雑でデッドテックな未来都市で、こちらのほうが現実的。このカプセルタワーは建設当初はウルトラモダンを目指したのだろうけど、年月を経て図らずもデッドテックな味わいを兼ね備えることになってしまった。やはりこれはいろんな意味で永久保存してほしい建築だ。

2017/07/26(水)(村田真)

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