artscapeレビュー

2014年01月15日号のレビュー/プレビュー

ダイチュウショー

会期:2013/12/21~2013/12/28

府中市美術館市民ギャラリー+ループホール[東京都]

20世紀美術最大の冒険といってもいい「抽象」も、いまや絶滅危惧種に指定されそうなマイナスの勢いだ。いったい抽象はどこへ行ってしまったのか、みたいなグループ展。O JUNをはじめ荻野僚介、門田光雅、木村俊幸、佐藤万絵子、椎木静寧、末永史尚、五月女哲平、玉井健司ら20人が、美術館とギャラリーの2会場で発表している。しかしいわゆる抽象画ばかりとは限らず、具象イメージもあれば写真もインスタレーションもあり、もはや抽象も具象もないだろみたいな声が聞こえてくる。それにしてもいったい絵画はこれからどこへ向かっていくというのか。

2013/12/21(土)(村田真)

酒井耕・濱口竜介監督「なみのこえ 気仙沼」上映終了後トークショー

アップリンク[東京都]

渋谷のアップリンクにて、『なみのこえ 気仙沼』の上映後、酒井耕監督とトークショーを行なう。筆者は建物、酒井は人の語りを通じ、未来への記憶に関心をもつ。映像技術の出現後、口承は異なる可能性を獲得するが、現在の被災者の語りも、遠い未来においては死者の語りとしてそのまま残っていく。2013年の『なみのこえ 気仙沼』と『なみのこえ 新地町』は、被災者が自ら語る『なみのおと』(2011)の手法を踏襲しつつ、岩手から福島へ南下した前作と違い、それぞれに街を限定し、一組につき約15分程度のリズムで語らせる。前作から時間を経たことで、今度は商売や住宅など、将来のことが話題に上がるようになったことが違いか。トークショーで、酒井監督が述べたように、被災の証言者もわれわれもみな死んでいるであろう100年後を意識した考え方が必要だろう。被災体験も震災遺構も、今生きているわれわれだけが所有するものではなく、今は主張できない未来の他者のものでもあるべきだ。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展

会期:2013/12/14~2014/01/26

国立新美術館 企画展示室2E[東京都]

国立新美術館の「未来を担う美術家たち DOMANI 建築×アート」展へ。文化庁芸術家在外研修を扱う同シリーズとしては、初めて建築家をまとめて紹介した。総勢で約40名だが、部屋を細分化して並べる(アーティストは大空間を使えるのだが)。さすがに知っている人が多い展示で、いろいろと近況を知る。DOMANIのアートでは、大栗恵、小笠原美環、川上りえ、吉本直子のアートは、建築的、空間的で好みの作品だった。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

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六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト─来るべき風景のために

会期:2013/09/21~2014/01/13

森美術館[東京都]

森美術館「六本木クロッシング2013」展は、震災以降も意識した社会派のアートを集めたということで、あいちトリエンナーレ2013との比較も可能だが、下道基行、丹羽良徳、金氏徹平、大友良英らの重複を除き、だいぶ違うセレクションになっている。これは美術の多様性を示すだろう。セレクションでは、在外の日系アーティストが多いのが興味深い。ただし、それぞれの作品の解説文が少しわかりにくいのが、気になった。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

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磯崎新 都市ソラリス

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)ギャラリーA[東京都]

会期:[第一期]2013/12/14~2014/01/13
 [第二期]2014/01/15~02/08
 [第三期]2014/02/11~03/02
ICCの磯崎新「都市ソラリス」展へ。内容は、1960年代から2010年代までの半世紀にわたる都市への思考と実践の軌跡を紹介するもの。ICCとしては海市から約15年後の区切りにあたる。現在のプロジェクトが、中国に集中していることがよくわかる。またコンピュータ・エイデッド・シティや都庁舎のコンペ案など、木の模型が本当に劣化せず、きちんと残るものだと改めて感心した。磯崎新、高山明、宮本隆司らと、ソラリス展のトークセッション「都庁」に出演する。戦後、モダニズムは民主主義の建築となり、丹下は水平のピロティ型を確立、佐藤武夫は垂直の塔型という庁舎のプロトタイプを提出するが、新都庁において、丹下はポストモダンの双塔に変わったのに対し、磯崎案は斜めのネットワークをもち、大きな広場空間を内包したと言えるのではないか。

2013/12/21(土)(五十嵐太郎)

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2014年01月15日号の
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