artscapeレビュー
竹内公太─公然の秘密
2012年05月01日号
会期:2012/03/17~2012/04/01
XYZ collective(SNOW Contemporary)[東京都]
「指差し作業員」の衝撃は、フクイチの映像を見ている私たちを、彼があくまでも一方的に指し示したことに由来していた。「見る主体」が、「見られる客体」によって逆襲されたと言ってもいい。だからこそ、「見る」側に安住している者にとって、その衝撃は大きかったのである。ところが、今回の個展で発表された作品のなかで、どうにもこうにも理解に苦しんだのは、アーティストと来場者が直接言葉を交わすことができる糸電話の作品だった。なぜなら、本来一方的だったはずの表現を、観客参加型の作品によって、わざわざコミュニケーションという表層的な次元に回収してしまったように見受けられたからだ。むろん、糸電話という対話の形式が完全な意思疎通を実現するわけではないし、逆に対話によってすら理解し合えない領域に来場者を突き落とすこともないわけではないだろう。とはいえ、この糸電話が「指差し作業員」の本質的な暴力性を削ぎ落としてしまっていたことは否定できないように思う。それが、芸術という不可解な価値の真髄に触れていたように感じられたことを思うと、なおさらいっそう悔やまれる。
2012/03/30(金)(福住廉)