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2012年05月01日号のレビュー/プレビュー

村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する

会期:2012/02/11~2012/03/25

神奈川県立近代美術館 葉山[神奈川県]

なにもないからこそ、なんでもやる。関東大震災にせよ、東京大空襲にせよ、広島・長崎への原爆投下にせよ、私たちの先達たちは焦土と化した焼け野原からいくども立ち上がり、その都度いくつもの文化や芸術を生み出してきた。村山知義の回顧展をつぶさに見て思いを新たにしたのは、豊かな芸術は貧しさのなかから生まれるという厳然たる事実。演劇から美術、写真、書籍、看板、はては建築にいたるまで、村山が手がけた創作物はじつに広範なジャンルに及んでいる。大量に集められた展示物の物量が、村山自身の貪欲な創作意欲を物語っているようで、まさしく沸騰する村山の迫力に圧倒されてやまない。それらのいずれもが貧しい時代の只中でなんとかやってきた格闘の痕跡と言えるが、村山が苛まれていた貧しさとはまた別の貧しさが世界を覆いつつある現在、はたして野性的で生命力にあふれた、新しい芸術は生まれるのだろうか。

2012/03/21(水)(福住廉)

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藤牧義夫 展 モダン都市の光と影

会期:2012/01/21~2012/03/25

神奈川県立近代美術館 鎌倉[神奈川県]

1930年代の創作版画の一翼を担った藤牧義夫の回顧展。版画や素描、葉書など、およそ200点が展示された。なにより30年代の街並みを忠実に反映しているように思える陰影に富んだ版画の迫力がすばらしい。同じ図像でも版によってテクスチュアが異なることを見せるために複数点を同時に展示するなど、見せ方もおもしろい。本展の見どころは幅25センチ、全長13メートルを超える白描絵巻で、たしかに見応えがあったものの、むしろ注目したのはポスターでたびたび発揮された創作的な文字の数々。《新版画集団4回展ポスター(バレンと手)》(1934)には、「新版画集団個展」という文字が縦方向に並べられているが、このうちの「個」の文字が「4回」とも読めるように組まれており、4回展の意味合いを重ねた遊び心が発揮されていることがわかる。ここには、版画を版画として自立させようとする純粋芸術の志向性というより、むしろ文字というもっとも身近で、だからこそもっとも改変しやすい素材を使って遊ぶ限界芸術のそれが明らかにうかがえる。藤牧によるレタリングは、例えば佐藤修悦によるガムテープ文字に継承されているのではないか。

2012/03/22(木)(福住廉)

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リアリティとの戯れ -Figurative Paintings-

会期:2012/03/23~2012/04/01

なんばパークス7Fパークスホール[大阪府]

大阪芸術大学グループ出身の20~30代前半の若手画家7名(苅谷昌江、小橋陽介、町田夏生、坂本真澄、田岡和也、中嶋寿挙、小松原智史)をピックアップしたグループ展。デジタル技術の進化等によってリアルとフィクションの境界線が不明瞭になったいま、自分自身が描き出す小さな想像世界のなかにリアルを見出す傾向を「リアリティとの戯れ」と規定。そうした作風を持つ若手作家を集めたものだ。7名のなかにはもともと関西で活動していたにもかかわらず、最近はすっかり首都圏を中心に活動している作家が混じっている。彼らの最新の動向を知ることができたのが収穫だった。

2012/03/24(土)(小吹隆文)

サイモン・エヴェリントン essence

会期:2012/03/27~2012/04/08

楓ギャラリー[大阪府]

陶板をT字状に貼り合わせた大小のピースをつくり、それらを自由に合体させては棒で叩いて成形した陶オブジェ。金属質の色合いを持つ作品は、まるで岩かひしゃげた鉄の塊のようにも見え、強い存在感を放っている。一部の作品は青、赤、オレンジに着彩されているが、このどぎつい色は釉薬ではなく、焼き終えたオブジェにアクリル絵の具で彩色したものだ。しかし、このどぎつい色合いが造形と絶妙にマッチしている。陶オブジェの表現にもまだまだ伸びしろは残っていることを実感した。

2012/03/27(火)(小吹隆文)

任田進一 屹立する白

会期:2012/03/27~2012/04/19

くちばしニュートロン[京都府]

以前の作品では、煙の塊が空中で静止しているような不思議な情景を写真に収めていた任田進一。本展の新作は乳白色の雲のようなものを捉えており、前作以上に複雑な表情を見せてくれる。気象衛星から捉えた大気の様子とでもいえばよいのだろうか。一体どのような手法を用いたのだろうか。謎解きが本意ではないことは承知だが、あまりにも神秘的な図像なので、どうしても制作法を知りたくなってしまう。

2012/03/28(水)(小吹隆文)

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