artscapeレビュー
日本繁昌大展覧会──チャリティ広告展
2012年05月01日号
会期:2012/04/04~2012/04/09
新宿伊勢丹[東京都]
1年前の3月11日からながらく、テレビではいつものCMを見ることができなかった。街に貼られていたポスターもいつの間にか姿を消していた。ふだん目にしていたものがなくなると、あらためてその存在が意識される。広告はたんにものを売るだけのものではない。その時代の文化をつくっているのだ。「日本繁昌大展覧会」は、広告をキーワードにした震災復興のためのチャリティ企画。伊勢丹新宿店の展示会場は3つのゾーンで構成されている。ゾーン1は、ポスターや看板、宣伝用ノベルティなど、北原照久の広告コレクションを展示する。ゾーン2は、1960年代半ばから80年代までの資生堂の化粧品ポスターとテレビCM。そして、ゾーン3は「未来広告」である。20人のデザイナーたちに与えられたテーマは、時代のヒーロー。おそらくそれぞれのデザイナーたちが子どものころにとりこになったであろうヒーローを題材に、オリジナルのポスターを制作し、売上を支援金とする企画である。同時に伊勢丹新宿店、日本橋三越、銀座三越のショーウィンドウでは、「過去広告」と「未来広告」をテーマにしたウィンドウ展覧会も開催された。しかし、なぜ「広告」なのか。なぜ「ヒーロー」なのか。テーマを投げられたデザイナーたちがポスターに付したコメントもさまざまである。浅葉克己の「月光仮面」は「持っているピストルを水鉄砲に持ち替えて、悪い物質を分解する液体を発射。ガレキの山に水鉄砲でピューッピューッとかけまくる」。中島英樹の「狼少年ケン」は、自然エネルギーを使ったジャングルの再生を謳う。服部一成の「悪魔くん」は、未来の新商品を広告する。「中身は何なのかは作者の僕も知りませんが、この怪しい商品を売って売って、大繁昌するつもりです」。きっと難しく考えてはいけないのだろう。懐かしい広告、あこがれのヒーローにあの頃の夢と希望を託して、元気な明日の日本を創っていけばよいのだ。[新川徳彦]
2012/04/09(月)(SYNK)