artscapeレビュー
プレビュー:「ダンスアーカイヴプロジェクト作品 4都市巡回公演」(神戸公演)
2017年10月15日号
会期:2017/11/18
神戸アートビレッジセンター[兵庫県]
「ダンスアーカイヴプロジェクト」は、日本現代舞踊のアーカイヴ資料の収集整理に加え、次代への継承とさらなる創作の土台の構築も含めたダンスアーカイヴの可能性を探求するプロジェクトである。アーカイヴ資料を駆使してダンス作品の創作や展示を行ない、その今日的価値を提示している。
本公演は、札幌、神戸、埼玉、高知の4都市を巡回するうちの神戸公演。A・Bプログラム計3作品が上演される。Aプログラムの川口隆夫『大野一雄について』は、大野の踊る姿を実際には見たことがないという川口が、大野の代表的な3作品『ラ・アルヘンチーナ頌』『わたしのお母さん』『死海』の映像記録を緻密に分析し、振付を厳密に模倣して再現する作品。2013年の初演後、国内外で再演を繰り返してきた。筆者は2015年の京都公演を実見したが、伝説化したダンスを「いま・ここ」に鮮やかに受肉化しつつ、メタ的な仕掛けを駆使して「大野一雄」の脱神話化を図り、大野一雄という固有の強烈な肉体を離れても、その「振付」の強度の持続は可能かという問いを提示するものだった(詳細は下記の関連レビューをご覧いただきたい)。
Bプログラムでは、岡登志子『手術室より』と大野慶人『花と鳥』が上演される。前者で参照される『手術室』は、日本モダンダンスのパイオニア、江口隆哉と宮操子の初期の代表作。マリー・ヴィグマンに師事していた江口と宮が1933年にドイツで初演し、翌年の帰国公演で当時27歳の大野一雄を感動させた。しかし、この作品について残されているのは、一枚の舞台写真と江口の語った言葉のみ。「再演」がおそらく不可能なこの作品を、江口と宮がヴィグマンから学んだ本質が何だったかを探り、日本人による最初期のモダンダンスを演繹的に再構成する。また、大野慶人『花と鳥』は、コラージュ的な構成の中に、大野慶人の舞踏家としての個人史と大文字の「舞踏」の歴史が交錯するような作品。大野一雄『死海』初演(1985)にあたり土方巽が大野慶人に振り付けた作品、細江英公が監督し、土方と大野慶人が出演した短編映画『へそと原爆』(1960)の上映、大野一雄の『ラ・アルヘンチーナ頌』冒頭のシーンを当時の衣装と音楽を用いた再現、そして大野慶人自身の振付作品で構成される。
プログラム全体を通して、「大野一雄」を一つの軸に、舞台芸術における継承のあり方やアーカイヴの活用の可能性について考える機会となるだろう。
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2017/09/30(土)(高嶋慈)