artscapeレビュー
引込線2017
2017年10月15日号
会期:2017/08/26~2017/09/24
旧所沢市立第2学校給食センター[埼玉県]
文字どおり「引込線」でやってたときには見に行ってたけど、会場が給食センターに移ってからは足が遠のいてしまい、訪れるのは今回が初めて。出品は遠藤利克や伊藤誠といったベテランから若手まで20組で、調理機器の置かれた大空間、事務室、休憩室、駐車場などに作品を展示している。おもしろいものもつまらないものもいろいろあるが、もっとも印象に残ったのは寺内曜子のインスタレーション《かまいたち》。とてつもなくスゴイというのでもないのだが、ちょっと傷口に触れるような、あるいは見てはいけないものを見たような妙な感触がある。角の部屋の窓を黒いシート(裏は赤)で覆い、2カ所をバツ印に裂いたもの。ひとつはそのままバツ印のかたちに光が入り、もうひとつは裏面をこちら側に裏返して、窓の上下左右に赤い三角形を広げている。ただそれだけなのだが、絶妙なのは裏を赤にしたことと、切り口を直線ではなくあえてギザギザにしたこと。そのことによってただのバツ印が赤らんだ傷口に見え、それを開いたところは舌か陰唇を連想させるのだ。いや、そんな連想をするのはぼくだけかもしれないが、たとえ作者にもそんな意図はなかったとしても(寺内は一貫して表と裏、内と外といった問題をテーマにしてきた)、こんな場所でエロスとタナトスを感じさせる痛々しくも艶やかな作品に出会えた喜びは大切にしたい。小雨のそぼ降るなか、屋外では吉川陽一郎がひとりシジフォスのように延々と円を描いていた。ごくろうさん。
2017/09/07(木)(村田真)