artscapeレビュー

田淵三菜「FOREST」

2017年10月15日号

会期:2017/09/08~2017/09/26

Bギャラリー[東京都]

田淵三菜は、2016年に第2回入江泰吉記念写真賞を受賞し、写真集『into the forest』を刊行した。2012年、23歳の時から北軽井沢の森の中の山小屋に移り住み、1年間かけて、ひと月ごとに驚くべき勢いで変化していく森の姿を捉えきったそのシリーズは、新たな自然写真の可能性を指し示す鮮やかなデビュー作となった。今回の新宿・Bギャラリーでの展示では、森の落ち葉をそのままガラスケースに詰め込んだインスタレーションなどとともに、「それ以後」の彼女の写真の展開を見ることができた。
田淵はいまもなお北軽井沢で暮らしているが、その生活のかたちは少しずつ変わりつつある。2年前からは、難病のパーキンソン病を患っている父も同居するようになった。そのためもあって、森そのものよりはその周辺にカメラを向けることが多くなってきている。今回の「FOREST」のシリーズは、北軽井沢の住人たちや訪ねてきた友人たち、父が同居するために改装工事が進行中の山小屋、森で出会った犬たちなどが前面に出ることで、圧倒的な自然と向き合っていた前作とは異なる、「ひと」の気配が濃厚なシリーズとして成立していた。
その変化を、むしろポジティブに捉えるべきだろう。彼女にとっての「森の生活」がこれから先どんなふうになっていくのかはわからないが、山小屋という拠点を中心として、さまざまな生き物たちが織りなす小宇宙を、あくまでも等身大の視点で見つめ続けるという視点は揺るぎのないものがある。前作と今回の展示とを合体した、もう一回り大きな「FOREST」のシリーズも視野に入ってきそうな気もする。

2017/09/08(金)(飯沢耕太郎)

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