2020年10月15日号
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artscapeレビュー

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

2020年07月01日号

会期:2020/06/09~2020/09/27

東京都現代美術館[東京都]

10年前に金沢で見たとき、よくできてるとは思うけど、それ以上特に感銘を受けなかったなあ。今回もやっぱり同じ。いや前回以上によくできてるだけに、なんの引っかかりもなく素通りしてしまう。もちろんエコロジーとかサステナビリティとか理論的裏付けはあるのだが、そうであればあるほどまるで優等生の解答を見ているようなある種の空しさを感じるのだ。あるいは、チームラボみたいにその場では十分に楽しめるのに、あとになにも残らないみたいな。それで十分といえば十分なんだけど、ぼくが期待するアートではない。

会場に入ると、最初に茫洋とした水彩画があるが、これは紙の上に置いたグリーンランドの氷河の氷が解けて顔料と混ざり合ってできたにじみだそうだ。その次の円形のドローイングは、作品を運ぶ際、二酸化炭素を多く排出する飛行機の輸送を避け、ベルリンから日本まで鉄道と船で運んだときの輸送中の揺れを記録したもの。どちらも環境汚染に対する警鐘ともとれるが、作品自体は偶然による産物にすぎない。

ガラスの多面体に光を当て周囲に反射させる《太陽の中心への探査》(2017)は、ソーラーエネルギーによって動かしているそうだ。とても美しい作品だけど、ソーラーエネルギーを使ってるとかいちいち弁解がましくも聞こえる。床に置かれたライトの前を通ると壁に虹色の影が映る《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》(2020)や、天井から吊った円形のガラス板に光を当て、重なり合う色の変化を楽しむ《おそれてる?》(2004)は、色彩のスペクトルを応用したライトアート。吹き抜けの大空間には、展覧会名にもなった新作《ときに川は橋となる》(2020)があり、円形の容器に張った水の揺らめく波紋を頭上のスクリーンに映し出している。

どれも実によくできているし、とても美しいのだが、原理的には光や色彩の性質を利用したライトアートだったり、偶然性を応用したオートマティスムだったりして、20世紀の前衛が試みてきた手法だ。もちろんそれを新たな装いの下に完成度を高め、環境問題への注意を喚起している点は評価もできるのだが、かえってそれがあざとさを感じさせるのも事実。

2020/06/11(木)(村田真)

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