artscapeレビュー

天覧美術/ART with Emperor

2020年07月01日号

会期:2020/06/02~2020/06/27

eitoeiko[東京都]

先週「桜を見る会」で再開したeitoeiko、今回は「天覧美術」だ。もうコワイものなしだな。天覧試合は天皇がご覧になる試合のことだが、「天覧美術」とは天皇を見る美術のことらしい。企画したのは「桜を見る会」にも出品したアーティストの岡本光博で、彼の運営する京都の画廊KUNST ARZTからの巡回。出品は木村了子、小泉明郎、鴫剛、藤井健仁、それに岡本の5人。ここで「おや?」っと思うのは、80年代に活躍したスーパーリアリズムの画家、鴫剛の名前が入っていること。どうやら岡本の大学時代の師匠らしい。作品も「桜を見る会」に出してもおかしくない《ピンクの国会議事堂》など、リアリズムそのままに風刺をきかせている。鴫が岡本に影響を与えたのか、岡本が鴫に刺激を与えたのか。

彫刻家の藤井健仁は、昭和天皇と麻原彰晃の顔面彫刻を鉄でつくっている。どちらも「鉄面皮」ということだろうか。実物より黒くて大きく、デスマスクのように不気味だ。それにしても「天覧」というとアキヒトでもナルヒトでもなく、ヒロヒトを思い浮かべるのはぼくらの世代だけだろうか。天覧試合といえばやっぱり長嶋だもんね。新日本画の木村了子は、アイドルとしての平成天皇の肖像を御真影のごとく壁の高い位置に掲げたほか、菊花と肛門様をダブらせたヤバい作品も出品。これは案内状にもなっている。

首謀者の岡本は何点も出品。アングルの《泉》の女性の胸に2枚の金杯を当てた《キンぱい》、信楽焼のタヌキのキンタマのかけらを集めてサッカーボール状に金継した《キンつぎ》は、天皇を象徴する金に下ネタを掛けた「不敬美術」。また、鳥かごの中に小鳥の彫刻を置いた「表現の自由の机」シリーズも2点あるが(1点は金色)、これは慰安婦問題を象徴する例の少女像の肩に止まった小鳥を3Dスキャンで型取りしたものだという。その型取りしている岡本の姿を捉えた写真も鳥かごの中に収められている。ここには天皇の戦争責任や「表現の不自由」など重い問題が見え隠れするが、なにより深刻ぶらずに笑えるのがステキだ。

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