artscapeレビュー
織作峰子写真展─光韻─
2021年11月01日号
会期:2021/09/18~2021/09/28
和光ホール[東京都]
織作峰子の写真展は和光ホールでは3年ぶり、2回目になる。前回の「織作峰子展─恒久と遷移の美を求めて─」(和光ホール、2018年7月)の時から、デジタルのレーザープリンタと伝統的な箔押しの技法を融合させた「ピクトリアリズム」的な写真作品を発表し始めたのだが、本展ではその手法がより洗練され、内容的にも深みを持つものになってきた。本金箔を手押しした「樹齢」では、画像を反転させたシンメトリカルな画面構成を試み、アルミ箔を大胆かつ豪奢に用いた「夜を流れる桜花の始星」「二胡に舞う」などでは、琳派を思わせる装飾的な表現を追求した。集中して撮影した富士山の連作の集大成というべき「涛。波と富士山」では、四曲の屏風仕立ての大作に挑戦している。ほかに、写真を透明アクリルでサンドイッチする形式の作品も、多数出品されていた。
織作のように、日本の伝統的、工芸的な美意識を写真に取り入れようとしている写真作家が、まったくいないわけではない。だが、それらの多くは中途半端に終わっていることが多く、手法のみが目につくものになりがちだ。技術の完璧さと、内容的な必然性を両立させるのは、かなりむずかしいのではないだろうか。織作の仕事は、デジタル時代における写真と絵画との融合、高度な表現性とポピュラリティの両立という点において、ひとつの到達点となりつつある。次は、伝統美を踏まえつつ、それに依りかかることなく、さらに先に進めていくことが求められている。
2021/09/26(火)(飯沢耕太郎)