2021年12月01日号
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artscapeレビュー

カタログ&ブックス | 2021年11月1日号[テーマ:リアリズム]

2021年11月01日号

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、茨城県近代美術館で開催中の「上田薫とリアルな絵画」にちなんで「リアリズム」。このキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングをお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「リアリズム」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:アンドリュー・ワイエス作品集

画:アンドリュー・ワイエス
監修・著者:高橋秀治
発行:東京美術
発売日:2017年8月22日
サイズ:30cm、199ページ

20世紀アメリカを代表するリアリズムの巨匠ワイエスの画集。生涯、生地ペンシルヴェニアと夏の避暑地メイン州2つの地を拠点に、風景や親しい人々を描き続けた孤高の画家の傑作を収録する。


2位:フランシス・ベイコン・インタヴュー(ちくま学芸文庫)

著者:デイヴィッド・シルヴェスター(述:フランシス・ベイコン)
翻訳:小林等
発行:筑摩書房
発売日:2018年6月8日
サイズ:15cm、308ページ

自然主義的リアリズムを否定し、神経組織に直接伝わるようなまったく新しいリアリティーを創造し、現代絵画に多大な影響を与えたベイコンのインタビュー集。ベイコンに関する論考では必ず引用されてきた重要な書を文庫化。〔「肉への慈悲」(1996年刊)の改題改訳〕


3位:さまよえる絵筆 東京・京都戦時下の前衛画家たち

編著:弘中智子、清水智世
発行:みすず書房
発売日:2021年2月27日
サイズ:26cm、215ページ

戦時下の東京、そして京都に暮らした前衛画家たちは、それぞれのリアリズムを追求した。絵画作品と資料から、前衛絵画の一断面を明らかにする。板橋区立美術館・京都府京都文化博物館で開催される同名展覧会の公式図録。



4位:林亮太の超リアル色鉛筆入門 身近な静物から始める

著者:林亮太
発行:マール社
発売日:2016年8月8日
サイズ:26cm、111ページ

「えっ、これ、写真じゃないの?」と思わず驚く金属やガラスのリアリズム。ものの質感は色鉛筆の「色数を重ねて塗り込む」という技法で表現できます。本書では、バナナやガラスのコップなどシンプルなモチーフでその技法を説明。文房具としては身近な色鉛筆を使って、本格的な静物画を描いてみませんか?



5位:平壌美術 朝鮮画の正体

著者:文凡綱
翻訳:白凛
発行:青土社
発売日:2021年2月13日
サイズ:27cm、319ページ

絵画の中の朝鮮。2018年に開催された光州ビエンナーレでひときわ異彩を放った作品群が、朝鮮民主主義人民共和国のトップクラスの画家が集まって描く「朝鮮画」の展示であった。そのキュレーションをしたムン・ボンガンが、アーティストのアトリエ訪問やインタビュー、集められた資料を駆使し、平壌美術の最も核心的な部分であるこの絵画について6年をかけて執筆したものが本書である。社会主義リアリズムの芸術の典型的な形態でありつつも、独自の表現方法を追求してきた「朝鮮画」。朝鮮半島に平和が訪れることを願う著者が、芸術家としての視点と学術的な研究の両面を踏まえてプロパガンダとアートの境界線上に存在する平壌美術の現在を描く。






6位:もっと知りたいカラヴァッジョ 生涯と作品(アート・ビギナーズ・コレクション)

著者:宮下規久朗
発行:東京美術
発売日:2009年12月
サイズ:26cm、95ページ

劇的な明暗表現と革新的リアリズムによって、バロック絵画の扉を開き、その後の巨匠たちに大きな影響を与えた美術界の革命児・カラヴァッジョ。その鮮烈な魅力を、ついには殺人を犯してしまう破滅的生涯とともにたどる。



7位:写実絵画のミューズたち(別冊太陽 日本のこころ)

編集:別冊太陽編集部
発行:平凡社
発売日:2017年11月27日
サイズ:29cm、159ページ

身近な存在である女性たちをモチーフに繰り広げられる美の競演──。写実というリアリズムの手法で、世界を切り取ろうとする画家たちの作品を紹介する。諏訪敦×宮下規久朗の対談も収録。折り込みページあり。



8位:画家とモデル 宿命の出会い

著者:中野京子
発行:新潮社
発売日:2020年3月25日
サイズ:20cm、190ページ

密かに紡がれた愛情、過酷な運命の少女への温かな眼差し。名画に刻印された知られざる関係と画家の想いを読み解く! 生涯独身を貫いた画家サージェントによる黒人青年のヌード。身分違いの女公爵への愛のメッセージを絵のなかに潜ませたゴヤ。遺伝的疾患のために「半人半獣」と呼ばれ差別された少女を情愛をもって描いたフォンターナ。リアリズムの巨匠ワイエスが15年にわたり密会し描いた近隣の人妻。絵に画家が刻み込んだ、モデルとの深淵なる関係。




8位:アンドレ・バザン 映画を信じた男

著者:野崎歓
発行:春風社
発売日:2015年6月25日
サイズ:20cm、220+7ページ

映画批評の金字塔「映画とは何か」を著したアンドレ・バザン。没後半世紀を超えた今、彼の遺したテキストは、現代アジア映画、宮崎アニメにも通じるのか。リアリズム失効の現代に問う、来るべき映画のための論考集。



10位:土門拳 鬼が撮った日本(別冊太陽)

監修:藤森武
発行:平凡社
発売日:2009年2月13日
サイズ:29cm、183ページ

日本を代表する写真家、土門拳。戦前戦後にかけて社会の様相をリアリズム写真で追究し、また、恐るべき執念と不屈の闘志で芸術写真に第一級の仕事を成し遂げた、究極の写真の世界と巨匠の全貌に迫る。生誕100年記念。



10位:ヘッダ・ガブラー(近代古典劇翻訳〈注釈付〉シリーズ)

著者:ヘンリック・イプセン
翻訳:毛利三彌
発行:論創社
発売日:2021年4月13日
サイズ:19cm、211ページ

世紀末閉塞社会の女性心理を描いた近代リアリズム演劇の白眉。「人形の家」の登場人物と互いに対応し、パロディとも言われるイプセンの傑作「ヘッダ・ガブラー」を新たに訳し、詳細な註釈を付す。





artscape編集部のランキング解説

茨城県近代美術館で今年の12月12日(日)まで開催されている「上田薫とリアルな絵画」展。1960〜70年代に台頭した「スーパーリアリズム」における主要な日本人作家として紹介されることの多い上田ですが、その写真と見紛うほど解像度の高い精密な描写は、日常のなかで私たちが何気なく行なっている「見る」行為の不完全さ、つまり現実だと捉えているものは実はデフォルメされたものだという“見えていなさ”を逆説的に提示してくれているような気もします。
美術における「リアリズム」については、現代美術用語辞典ver.2.0ではこう解説されています。「〈現実〉の現象を直感し、理想化を避けてそれを表出することに価値を置く表現のこと」。ただしその後には「そもそも対象とされる〈現実〉が、内感に基づくものなのか、それとも客体を志向するものなのか、あるいはその両者の超克を目指すものなのか、といったさまざまな問題設定によって大きな振り幅を持たざるをえない」とも続いており、その定義の難しさ/複雑さが窺えます。
今回のランキングで1位に輝いたのは、アメリカのリアリズム絵画の巨匠アンドリュー・ワイエス(1917-2009)の作品集。日本でも高い人気を誇る作家でありながら、国内では展覧会図録を除いてワイエスの画集はこの本までほとんど出版されてこなかったそう。作品の図版だけでなく、編者の高橋秀治氏によるサイドストーリーの解説やコラムも充実しており、作家の生きたアメリカ東部の土地や時代、家族や絵のモデルになった人物との人間関係まで、ワイエスという人物像が自然と浮かび上がってくるような丁寧な編集がなされた一冊です。
『怖い絵』シリーズなどで知られる中野京子氏による『画家とモデル 宿命の出会い』(8位)でも、その最終章でスポットが当てられているのはワイエス。同書の表紙でもある《編んだ髪》(1979)など240点以上の作品でモデルを務めたドイツ移民の女性ヘルガ・テストルフとワイエスが長年築いた、お互いの配偶者にも秘匿されていた関係性にはいまでも多くの謎が漂いますが、その複雑さを肯定しつつの著者の筆致は鮮やか。ワイエス以外にもレンブラントやシャガール、モディリアーニなど、さまざまな時代・地域のアーティストとモデルのストーリーから、いわゆる芸術家とファム・ファタルといった古典的なイメージに留まらず、人の数だけオリジナルの関係性があること、そしてそれらを知ったうえで鑑賞する作品の味わい深さを思い知らされます。
そのほか、「社会主義リアリズム」(社会主義国で公式とされた芸術様式)の影響関係から朝鮮の絵画を論じ直す『平壌美術 朝鮮画の正体』(5位)や、脈々と続く写実絵画の現代作家を取材したムック(7位)、あるいは演劇におけるリアリズムの潮流を語るうえで欠かせないイプセン作品の新訳本(10位)など、「リアリズム」を通した近年の人々の関心が見て取れるランキングになりました。




ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「総合」キーワード「リアリズム」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年10月27日~2021年10月26日〉

2021/11/01(月)(artscape編集部)

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