2022年09月15日号
次回10月3日更新予定

artscapeレビュー

都美セレクション グループ展 2022 たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇

2022年07月01日号

会期:2022/06/11~2022/07/01

東京都美術館 ギャラリーA[東京都]

パラレルモダンワークショップ(P.M.W.)による展示。P.M.W.は、日本の近代美術(モダン)においてありえたかもしれないもう一つの並行世界(パラレル)を想像することで、現代を捉え直そうという研究会(ワークショップ)、だそうだ。今回は、昨年上野公園でゲリラ的に行なった「たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇」に続く、いわば「屋内篇」で、いずれも、もし上野公園に東京美術学校(東京藝大)がつくられなかったら、もしそこで日本画が教えられなかったら、日本画はどうなっていただろうかを問うている。日本画が明治期に岡倉天心らによって東京美術学校を舞台に、西洋画(油絵)の影響を受けながらそのカウンターとして新たに創出されたジャンルであることは知られているが、その史実をいちどリセットして考え直してみる思考実験といえる。お題目も刺激的だが、それを上回る刺激的な作品も多く、とても見応えがあった。

会場に入るとまず受付を兼ねた屋台風の小屋があり、チラシや小品が並んでいる。これは親指姫の《虎狼鯰商店》(2021)という作品。その隣には、歩火(三瀬夏之介)による蝶番のついた折りたたみ式の《移動式展示場「歩板」》(2022)が連なり、表裏に何人かの作品が展示されている。なかでも、タブローのように平たい箱の蓋に絵を描いた泉桐子の《蓋》(2022)は、蓋を開けたら中身のない日本近代絵画への痛烈な批判とも受け取れる。この小屋と移動式展示場は、五姓田芳柳が浅草で開いたとされる油絵茶屋を連想させもする。



[筆者撮影]


会場中央には、上野公園の不忍池辯天堂(六角堂)を模した長沢明による六角形の作品《幻影》(2022)が立ち、その周囲に金子富之の20メートルを超える大作をはじめ、20点近い作品が並んでいる。奥の壁には、上野公園の名物だったブルーシートに山本雄教が富士山を描いた《Blue mountain》(2022)が掛かり、その手前で山下和也が《上野恩賜公園出開帳霊場巡り物見遊山(東京都美術館篇)仮本堂》(2022)としてテントを張り、背後の富士山と呼応する。中村ケンゴによるウォーホルばりの《大日本帝国の首相》(2022)と、指名手配犯のモンタージュ風《平成の首相》(2022)は秀作だが、このなかにあっては目立たない。尾花賢一の《日出処/日没処》(2022)は、2畳敷きのゴザにちゃぶ台などの日用品を置き「上野画宣言」を掲げている。確かに、伝統的な日本絵画とは似て非なる日本画も、西洋の油彩画とは似て非なる洋画も、合わせて「上野画」と括ってみると納得できる。日本画にあぐらをかいた単なる日本画には興味ないが、このように日本画の成り立ちを問うような「メタ日本画」には大いに興味をそそられる。

2022/06/17(金)(村田真)

2022年07月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ